法テラスの費用を払えない場合は、支払いを促すハガキが届いたり、電話や手紙で督促を受けたりします。それでも滞納を続けると、法的措置がとられるケースもあるため注意が必要です。このコラムでは、法テラスの費用を払えない場合のリスクや対処法などを解説します。
法テラスの仕組みとは?基礎知識をおさらいしよう
ここでは、法テラスの基礎知識をわかりやすく解説します。
- 法テラスは法律相談のために国が設立した機関
- 法テラスで利用できるサービス
- 民事法律扶助業務を利用するための条件
- 法テラスを利用する方法
- 法テラスの債務整理の費用相場
法テラスは法律相談のために国が設立した機関
法テラス(正式名称:日本司法支援センター)は、国民向けの法的支援を行うために国が設立した機関です。司法制度改革の三本柱のひとつを担い、さまざまな法的トラブルの総合案内所として機能しています。
法テラスの設立前は、法的トラブルが起こった際「どこに相談すればいいのかわからない」「経済的な理由で専門家に依頼できない」などの問題がありました。
このような状況を改善するため、法的トラブルの解決に必要な情報・サービスに、すべての国民がアクセスできる環境の構築を目的として、2006年4月10日に法テラスが設立されました。
法テラスで利用できるサービス
法テラスでは、法律に関するさまざまなサービスを提供しています。主なサービスを以下にまとめました。
- 情報提供業務
- 犯罪被害者支援業務
- 国選弁護等関連業務
- 司法過疎対策業務
- 民事法律扶助業務
- 日本弁護士連合会委託援助業務 など
ここでは、代表的なサービスである「情報提供業務」と債務整理に関連する「民事法律扶助業務」について解説します。
情報提供業務
情報提供業務とは、法制度や相談機関などの情報を提供するサービスです。電話やメール、面談などさまざまな窓口が用意されており、相談内容に応じて法律の仕組みや法的トラブルの解決方法を紹介してもらえます。また、弁護士会や司法書士会などの相談窓口を案内する役割も担います。
情報提供業務は誰でも利用できる無料のサービスです。ただし個々のケースに合わせた法律相談ではないため、専門家によるアドバイスはもらえません。
民事法律扶助業務
民事法律扶助業務とは、無料の法律相談や弁護士などの費用を立て替えるサービスです。通常、債務整理を専門家に依頼する際は、着手金や報酬金などの費用がかかるため、金銭的な事情から依頼できないケースは少なくありません。
民事法律扶助業務は、経済的な理由で法律相談が難しい方が法的トラブルにあったとき、所定の条件を満たす方であれば、専門家に無料で法律相談ができます。また、着手金や報酬金などの費用を立て替えてもらうことも可能です。ただし立替制度を利用した場合は、費用を後から返済する必要があります。
民事法律扶助業務を利用するための条件
民事法律扶助業務を利用するには、所定の条件を満たす必要があります。無料法律相談と立替制度の利用条件を整理しておきましょう。
無料法律相談の利用条件 | 立替制度の利用条件 |
---|---|
・収入要件と資産要件を満たすこと ・民事法律扶助の趣旨に適していること | ・収入要件と資産要件を満たすこと ・民事法律扶助の趣旨に適していること ・勝訴の見込みが一定程度あると判断できること |
「収入要件」として、申込者と配偶者の手取り月収が以下の基準を満たすことが必要です。
「資産要件」として、申込者と配偶者が資産を所有している場合は、以下の基準を満たす必要があります。
「民事法律扶助の趣旨に適していること」とは、サービスの利用目的が宣伝や報復などではないケースを指します。反社会的または違法的な行為を目的としている場合、民事法律扶助を利用できません。
「勝訴の見込みが一定程度あると判断できること」とは、立替制度のみ適用される条件です。立替制度の利用が認められるのは、法的な手段をとることでトラブルの解決が見込まれる場合に限られます。民事法律扶助を利用したい場合は、ご自身のケースが条件に該当するか確認しましょう。
法テラスを利用する方法
法テラスを利用する際は、以下の流れで手続きを行います。
- 法テラスに問い合わせる
- 専門家に無料で相談する(条件を満たす場合)
- 専門家と委託契約を結ぶ
法的トラブルについて相談したい場合は、居住地にある窓口へ電話またはメールで問い合わせましょう。条件を満たす場合は専門家による無料相談を受けられます。相談時間は1回あたり30分程度で、ひとつの事案について相談できる回数は3回までです。
法律相談が終了したら、必要に応じて専門家と委託契約を結びましょう。
法テラスの債務整理の費用相場
法テラスで債務整理をする際は、目安として以下の費用がかかります。ただし利用する事務所や債務整理の手段などによって、金額は異なります。
債務整理の手段 | 着手金 | 実費 |
---|---|---|
任意整理(1社) | 33,000円 | 10,000円 |
個人再生(1〜10社) | 165,000円 | 35,000円 |
自己破産(1〜10社) | 132,000円 | 23,000円 |
法テラスを利用するメリット
法テラスを利用するメリットは、主に以下の4つです。
- 任意整理の減額報酬がかからない
- 過払い金回収の報酬金の基準が低い
- 住宅ローン特則を利用する場合も増額されない
- 自己破産する際の予納金が免除される可能性がある
法テラスは任意整理の際、減額報酬がかかりません。過払い金を回収した際の報酬金も抑えられているため、一般的な事務所に相談するよりも費用を節約できます。なお、費用の一括返済が難しい場合は分割返済も可能です。
また、個人再生で住宅ローン特則を利用する場合は、通常費用を上乗せして請求されます。しかし法テラスでは、住宅ローン特則を利用しても増額されることはありません。また管財事件で自己破産する際は、生活保護受給者であれば予納金の支払いが免除される可能性があります。
法テラスを利用する際に注意すべきポイント
法テラスを利用すると、費用を抑えて法的トラブルの解決を目指せます。一方、法テラスを利用する際は、以下のポイントに注意が必要です。
- 審査に時間がかかることがある
- 専門家を指定できない
- 完全無料ではない
ここでは、法テラスを利用する際に注意すべきポイントを解説します。
審査に時間がかかることがある
民事法律扶助を利用する場合、審査に時間がかかるケースがあります。
審査内容によっては結果がわかるまでに時間がかかり、手続きが長引くこともあります。民事法律扶助を利用する場合は、時間に余裕をもって申し込んでください。
専門家を指定できない
法テラスを通じて弁護士や司法書士に依頼する場合、申込者は専門家を指定できません。専門家にはそれぞれ得意分野があるため、実績や経験の浅い方が担当になるケースもあります。
なお専門家を自ら指定したい場合は、持ち込み方式の利用が有効です。持ち込み方式を利用する流れは、以下のとおりです。
- 直接依頼したい専門家へ相談する
- その後、専門家を通じて法テラスに利用申請する
なお持ち込み方式は、専門家が法テラスと契約している場合のみ利用できます。利用する際は、専門家のホームページに法テラスを利用できる旨の記載があるかどうかを確認してみてください。
完全無料ではない
法テラスは完全無料のサービスではありません。無料で法律相談できるケースもありますが、民事法律扶助の条件を満たさない場合は相談料がかかります。
また、弁護士・司法書士報酬の支払いは立て替え払いのため、例外を除いて費用の返済義務が生じます。法テラスはすべてのサービスを無料で利用できるわけではないことを理解しておきましょう。
法テラスの費用を払えない場合のリスク&対処法
法テラスの立替制度を利用する場合は費用がかかります。基本的に分割で支払いますが、返済を続けるのが難しいケースもあるでしょう。
ここでは、法テラスの費用を払えない場合に起こるリスクと回避方法を解説します。
法テラスの費用を滞納した際のリスク
法テラスの費用を滞納すると、支払いを求めるハガキが送付されます。このハガキを使うとコンビニ払いが可能です。資金がある場合は早めに支払いを済ませましょう。なお、ハガキには納期限が定められています。期限を過ぎた場合はハガキでの支払いはできません。
ハガキが届いても支払いをしない場合、電話や手紙で督促がきます。さらに督促を無視し続けた場合は、法的措置をとられる可能性があります。
払えない場合は免除・猶予制度を検討すべき
法テラスの費用を支払えない場合は、免除や猶予制度を利用できるかどうか検討しましょう。法テラスでは所定の条件を満たした場合、返済の免除が認められます。返済の免除を希望する場合は、法的トラブルの解決後に償還免除申請を行いましょう。
また、返済が難しい事情を伝えると、返済額の減額や猶予が認められることもあります。費用を払えない場合はそのままにせず、早めに相談することが重要です。
法テラスの費用の返済が免除される条件
生活保護を受給している方は、法テラスの費用の返済が免除されます。民事法律扶助の契約時に受給していない場合でも、法的トラブルが解決した時点で受給していれば対象に含まれます。
生活保護受給者以外でも、以下の条件を満たす場合は免除を受けられます。
- 収入要件
- 資産要件
- 資力回復困難要件
参考:法テラス「生活保護を受給していない方の償還免除申請について」
法テラスの費用の返済が猶予される条件
法テラスで費用の返済が猶予される条件は、免除制度と同様に生活保護を受給していることです。また特別な事情により生活が困窮していると判断される場合も、返済の猶予が認められるケースがあります。
特別な事情に当てはまる理由には、「病気やケガを負っている」「ひとり親家庭である」「収入回復の見込みがない」などがあります。これらの事情がある場合は、返済の猶予を相談してみましょう。
一時的に借り入れして支払う方法もある
法テラスの費用を返済するのが難しい場合は、一時的な借り入れでしのぐ方法もあります。
費用の補填としてローンを利用する際は、セゾンのカードローン「MONEY CARD GOLD(マネーカードゴールド)」がおすすめです。カードローンが手元にあれば、申し込み後、最短数十秒で指定の金融機関へ口座へ振り込まれるため、法テラスの費用の返済日が迫っている場面にも役立つ可能性があります。
ATMの利用手数料も何度利用しても無料なので、MONEY CARD GOLDの利用を検討してみてください。
MONEY CARD GOLDについて詳しく知りたい方は以下をご覧ください。
法テラスの費用に関するよくある質問
法テラスを初めて利用する方は、さまざまな疑問点があるでしょう。ここでは、法テラスの費用に関するよくある質問を紹介します。
- 法テラスへの返済はどのように行う?
- 法テラスへの返済が始まるタイミングは?
- 返済日や返済額を変更できる?
法テラスへの返済はどのように行う?
法テラスへの費用返済は、原則として金融機関の口座からの自動引き落としで行われます。引き落としの際は手数料がかかるため、引き落とし日の前日までに「返済額+手数料」が残高にあるかどうか確認しましょう。
また口座引き落としが利用できない事情がある場合は、法テラスに相談して現金払いや銀行振込に切り替え可能です。返済は毎月分割払いが基本ですが、数ヵ月分をまとめて返済したり、一括返済したりすることもできます。
法テラスへの返済が始まるタイミングは?
法テラスへの返済は、原則契約を交わしてから2ヵ月後に開始されます。また立替制度を利用する際は自動引き落とし用の口座を届け出る必要があり、預金口座振替依頼書(または自動払込利用申込書)を提出しなければいけません。
なお必要書類を提出してから、自動引き落としの手続き完了までにかかる期間の目安は2ヵ月程度です。
返済日や返済額を変更できる?
法テラスの口座引き落とし日は、以下のとおりです。
- ゆうちょ銀行:15日か25日
- その他の銀行:27日
なお、毎月の収入額に変化があった場合は、返済額の見直しも可能です。利用中の地方事務所に援助番号と氏名を伝えて、相談してください。
残高不足で引き落としされなかった場合はどうすればいい?
法テラスの費用が引き落とされなかったときは、指定の口座へ振り込むか、次月に2ヵ月分が引き落とされます。
銀行振込の場合は、利用している地方事務所の口座に振り込んでください。次月に2ヵ月分の引き落としを希望する場合は、引き落とし日の2週間前までに利用中の地方事務所へ電話連絡してその旨を伝えましょう。
残りの支払い期間や残高を知るには?
利用中の地方事務所へ電話することで、残りの支払い期間や残高の確認が可能です。電話する際は、援助番号と名前を伝えてください。
なお、家族であっても本人の同意がない限りは教えられない点に注意しましょう。
費用の支払いが終了したら?
法テラスへの支払いが完了したら、完済通知書が届きます。
完済通知書は、支払い完了した翌月中旬頃に届くケースが一般的です。万が一届かない場合は法テラスに確認してみてください。
おわりに
法テラスとは、法律支援を目的として国が設立した機関です。条件を満たすと弁護士や司法書士費用の立替制度を利用できます。ただし立て替えてもらった費用は返済が必要です。
返済の滞納にはさまざまなリスクがあり、法的措置をとられるケースも少なくありません。条件次第では免除・猶予制度を利用できるため、費用を支払えない場合は早めに法テラスに相談しましょう。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。