高齢者の一人暮らしが増加する中で、防犯対策は安心して暮らすために欠かせない要素です。空き巣や特殊詐欺など、高齢者が狙われやすい犯罪も増えているため、早めの対策が必要です。
本記事では、犯罪の種類や具体的な防犯方法、さらに周囲の協力を得ながら安心できる環境を作るためのポイントを解説します。離れて暮らす親御さんの防犯対策について悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
- 高齢者の一人暮らしが増加傾向にある中、高齢者自身の「自分は大丈夫」という過信と相まって、犯罪被害が増加している深刻な状況がある
- 空き巣・窃盗、訪問販売、特殊詐欺など、高齢者を標的とした犯罪は手口が多様化・巧妙化している
- 防犯カメラの設置やドア・窓の防犯対策など、高齢者でも導入しやすい防犯対策が複数存在する
- 地域のコミュニケーションやセキュリティサービスの活用など、周囲のサポートを含めた総合的な防犯体制が重要
高齢者に防犯対策が必要な理由
近年、高齢者を狙った犯罪が増加傾向にあります。一人暮らしの高齢者が増えていることに加え、体力や判断力の衰えにより、犯罪のターゲットになりやすい状況です。
ここでは、高齢者に防犯対策が必要な理由について解説します。
高齢者の一人暮らしが増加している
内閣府が発表した「令和5年版高齢社会白書」によると、65歳以上の高齢者の一人暮らしは増加の一途をたどっています。1980年には65歳以上の男性で4.3%、女性で11.2%だった一人暮らしの割合が、2020年には男性15.0%、女性22.1%にまで上昇しました。
一人暮らしの高齢者は社会から孤立しやすい環境に置かれがちです。加齢による体力や判断力の低下も相まって、犯罪者にとって格好のターゲットとなってしまいます。
また、長年の生活で蓄えた貯金や年金などの財産を持っていると思われがちなことも、犯罪のターゲットにされる大きな要因です。特に詐欺グループは、こうした高齢者の資産に目をつけ、巧妙な手口で近づいてきます。
昔は家族と同居する高齢者が多く、家族が犯罪から守る「防波堤」となっていました。しかし、核家族化や地域のつながりの希薄化により、そうした防犯の機能が弱まっているのが現状です。
多くの高齢者は「自分は大丈夫」だと思っている
長年の人生経験から、自分の判断力に自信を持つ高齢者は少なくありません。しかし、その自信が逆に災いとなることがあります。内閣府の「特殊詐欺に関する世論調査」によると、70歳以上の高齢者の半数以上が「自分は被害に遭わない」と考えているという結果が出ています。この割合は、全年齢層の平均と比べて10%以上も高い数値となっています。
高齢者が自分は大丈夫だと考える理由として、「家族の声やうそを見分けられる自信がある」といった過信が挙げられます。また、「知らない番号からの電話には出ない」「怪しい話には乗らない」といった、これまでの経験則に基づく判断も、安全だと思い込む要因となっています。
しかし、こうした過信が防犯意識の低下を招き、犯罪に巻き込まれるリスクを高めています。特に特殊詐欺は手口が巧妙化しており、経験や知識だけでは見抜くことが難しくなっています。
高齢者が犯罪被害に遭う割合が増加している
警察庁の「令和2年警察白書」によると、刑法犯認知件数は平成14年をピークに減少傾向にあるものの、高齢者の被害割合は一貫して増加しています。令和元年の高齢者被害の割合は12.3%に達しており、20年前と比較して大幅な上昇となっています。
特に詐欺などの知能犯における高齢者の被害割合は33.9%と突出して高く、20年前と比べて25.0ポイントも上昇しています。次いで、暴行・傷害等の粗暴犯も増加傾向にあり、令和元年には9.8%と、20年前と比較して7.0ポイント上昇しています。
罪種別でみると、詐欺が37.6%、殺人が28.3%、窃盗が11.1%、傷害が10.2%、暴行が9.8%となっており、高齢者がさまざまな犯罪のターゲットになっていることがわかります。
参考:警察庁|令和2年警察白書
高齢者が狙われやすい犯罪とは?
高齢者を狙った犯罪は年々手口が巧妙化しており、その種類も多様化しています。特に一人暮らしの高齢者は、体力面での弱さや判断力の低下により、さまざまな犯罪のターゲットとなりやすい状況です。
以降では、高齢者が特に注意すべき犯罪の種類と、その手口について解説します。
空き巣・窃盗
単身世帯の高齢者は、侵入窃盗や侵入強盗の被害に遭うリスクが高まっています。犯人からすれば、家族で暮らす家よりも一人暮らしの高齢者宅のほうが、犯行を遂げやすいと考えるためです。
留守を狙う空き巣だけでなく、在宅時を狙って忍び込む「居空き」も発生しています。万が一、犯行現場に居合わせてしまうと、窃盗犯から危害を加えられる可能性も出てきます。このような場合、強盗傷害事件へと発展し、命の危険にさらされることもあります。
高齢者は視力や聴力が衰えていることも多く、侵入に気付かれにくいことから、犯罪者にとって格好のターゲットになってしまいます。また、犯行を目撃されても、身体能力が低下している高齢者なら追いかけられる心配が少ないと考え、大胆な侵入を試みるケースも見られます。
訪問販売
高齢者への悪質な訪問販売による被害相談は増加傾向にあります。健康や孤独への不安を抱えやすい高齢者は、親切にされると簡単に信用してしまう傾向があり、悪徳事業者はそこに目をつけて接近してきます。
手口は多様化・巧妙化が進んでおり、住宅リフォームや浄水器、布団、着物、健康食品などを言葉巧みに勧めてきます。床下や水道、屋根を無料点検すると称して訪問し、点検後に修繕や商品の契約を迫るケースも見られます。
さらに悪質な会社は、一度契約を取り付けた後も何度も訪れ、次々と商品を買わせようとします。強引な勧誘や身分の詐称、虚偽説明を行って大切な貯金や財産を奪おうとする手口も確認されています。
特殊詐欺
内閣府の調査によると、特殊詐欺は現在も1日あたり約1億円もの被害を生んでいます。令和4年における特殊詐欺の高齢者被害率は86.6%にも上り、とりわけオレオレ詐欺(98.2%)、預貯金詐欺(98.7%)、キャッシュカード詐欺盗(98.9%)では、ほとんどの被害者が高齢者となっています。
特殊詐欺の代表的な手口として、親族を装って電話をかけ、指定の預金口座にお金を振り込ませる「オレオレ詐欺」があります。また、自治体職員を名乗り、医療費の還付金が戻るなどと偽って ATMを操作させる「還付金詐欺」、架空の請求書を送りつけて指定口座に現金を振り込ませる「架空請求詐欺」なども横行しています。
特筆すべきは、これらの詐欺の手口が年々巧妙化している点です。自治体や税務署、年金事務所の職員を装い、電話でATM操作を指示するといった、一見して詐欺と見抜くことが難しい手口も出現しています。
高齢者の一人暮らしでもすぐに取り入れられる防犯対策とは
一人暮らしの高齢者を犯罪から守るためには、住まいのセキュリティ強化と日常的な防犯意識の向上が重要です。
ここでは、すぐに実践できる具体的な防犯対策をご紹介します。
高齢者自身の防犯意識を高める
防犯意識を持って生活することは、犯罪被害を防ぐ基本となります。例えばゴミ出しなど短時間の外出でも、必ず玄関や窓の施錠を心がける習慣をつけましょう。
留守であることを悟られないよう、不在時も部屋の明かりをつけておくことも効果的です。郵便物や新聞がたまっていると留守を見破られる恐れがあるため、長期の外出時は配達を止めるなどの対応も必要です。
見知らぬ訪問者への対応も慎重に行うべきです。インターホンやドアチェーンを活用し、顔や身分証を確認してから応対することが重要です。身に覚えのない荷物の受け取りは断り、不審に感じたら家族や警察に相談することをお勧めします。
防犯カメラを取り付ける
防犯カメラの設置は、犯罪抑止に大きな効果を発揮します。玄関先や死角を生みやすいトイレ・浴室の窓付近、ベランダなどへの設置が推奨されます。
設置場所は目につきやすい位置を選び、「防犯カメラ稼働中」のステッカーで周知することも大切です。空き巣や強盗犯に対して強い心理的プレッシャーを与え、犯行を思いとどまらせる効果があります。
予算の都合で複数台の設置が難しい場合は、ダミーカメラとの併用も検討できます。ただし、ダミーカメラは手の届かない場所に設置するなど、偽物と見破られないような工夫が必要です。
ドアや窓の防犯対策をする
玄関ドアの防犯性能を高めるため、「ワンドアツーロック」の導入を推奨します。補助錠を追加することで、ドアの鍵が二重になり、違法解錠を困難にします。
古いタイプのディスクシリンダー錠は、ピッキングで簡単に解錠される可能性があります。そのため、ピッキング対応のディンプルキーへの交換が望ましいでしょう。また、バールなどの工具による破壊を防ぐため、ドア枠とドアの隙間を塞ぐ「ガードプレート」の設置も効果的です。
窓の防犯対策としては、防犯ガラスへの交換や防犯フィルムの貼付が有効です。また、補助錠の取り付けや、雨戸・シャッターの設置、格子窓や二重窓の導入も検討に値します。
高齢者でも使いやすい防犯グッズを取り入れる
住まいの防犯性を高めるため、さまざまな防犯グッズを活用することができます。高齢者でも扱いやすく、効果的な防犯グッズをご紹介します。
防犯砂利や防犯アラーム
防犯砂利は通常の砂利よりも足音が響きやすく、不審者の接近を知らせる効果があります。玄関に通じる通路やトイレ・浴室の窓付近への設置がおすすめです。
威嚇ブザーは、窓など侵入口の周りに設置し、開閉時に大音量で警告を発する機器です。周囲に異常を知らせ、空き巣を威嚇する効果が期待できます。
センサーライト
人の動きを感知して点灯する照明器具です。夜間に不審者が近づくと自動的に明るく照らし、威嚇効果を発揮します。暗がりをなくすことで、防犯効果を高めることができます。
カメラ付きインターホン
訪問者を事前に確認できるため、不審者対策として効果的です。録画機能付きの機種であれば、応対できなかった来訪者の記録も残すことができます。
催涙スプレー
やむを得ない場合の護身用として、催涙スプレーの携帯も検討に値します。押すだけで簡単に噴射でき、玄関先や枕元など、家中の要所に置いておくことで、緊急時に備えることができます。
周囲の協力やサポートも大切!より安全に暮らすための防犯対策
一人暮らしの高齢者を犯罪から守るためには、個人での対策だけでなく、地域社会全体でのサポートが重要です。
以降では、近隣住民との関係づくりや、各種サービスの活用方法について解説します。
近隣住民とコミュニケーションをとる
空き巣は、地域の様子を事前に下見してターゲットを決めることが多いといわれています。その際、住民同士の連帯意識が強い地域は避ける傾向にあります。不審な行動をとっていると声をかけられる可能性が高いためです。
千葉県では、令和5年末時点で3,170団体、約16万4千人もの防犯ボランティアが活動しています。通学路での子どもの見守りや、町内のパトロール活動を通じて、空き巣や車上狙いの防止に貢献しています。
山梨県でも、防犯・交通安全に関する出張講座を開催し、犯罪に強い環境づくりを推進しています。このように、地域全体で防犯意識を高めることで、高齢者を見守る体制が整っていきます。
セキュリティサービスを利用する
警備会社が提供するホームセキュリティは、24時間365日の見守り体制があり、犯罪被害の予防に効果を発揮します。侵入を即座に検知するセンサーが設置され、異常があれば自動で警備会社に通報される仕組みです。
緊急時には警備員が現場へ駆けつけ、110番通報や消防・救急車の手配まで対応してくれます。駆けつけた警備員は救命や消防の訓練も受けており、応急処置の知識も持ち合わせているため、急病や火災時も安心です。
警備会社のステッカーを貼ることで、犯罪抑止効果も期待できます。市販の防犯ステッカーとは異なり、実際の警備体制があることから、犯罪者に強い威嚇効果をもたらします。
高齢者見守りサービスを利用する
東京都では、地域に高齢者を見守る拠点を設け、相談受付や生活実態の把握、関係機関と連携した見守り活動を展開しています。社会福祉士や介護支援専門員の資格を持つ相談員が、電話相談や戸別訪問、見守りネットワークの構築を行っています。
神奈川県二宮町では、IT技術を活用した見守りシステム「いまイルモ」を導入し、高齢者の日常生活をモニタリングしています。この情報は、家族や近隣住民、自治体職員で共有され、生活習慣の見直しや病気予防にも活用されています。
葛飾区など一部の自治体では、見守りサービス導入時の初期費用や設置費用の補助制度を設けています。補助額は自治体によって異なりますが、このような支援制度を活用することで、より手軽に見守りサービスを導入することができます。
くらしのセゾンの選べる親御さまサポートサービス「親サポセレクト」なら高齢な両親が離れて暮らしていても安心
離れて暮らす高齢の親御さまの安全を守ることは、働く子世代にとって大きな課題となっています。近くに親族がいない場合、犯罪被害に遭っても気づかれにくく、発見が遅れてしまうケースも少なくありません。また、仕事中はすぐに連絡が取れない状況も多く、緊急時の対応に不安を感じている方も多いでしょう。
そんな方におすすめなのが、くらしのセゾンが提供する選べる親御さまサポートサービス「親サポセレクト」です。ALSOKやSECOMなど信頼できる警備会社と提携し、24時間365日体制で見守り・駆けつけサービスを特別プランで提供しています。お客様のご要望に合わせて最適なサービスを選択できるため、親御さまの生活スタイルに合った安心の見守り体制を整えることができます。
さらに「親サポセレクト」では、日常生活のサポートも充実しています。病院受診時や買い物の付き添い、掃除・洗濯・食事づくりなどの家事代行サービスも用意。また、親御さまが入院や施設に入居した場合の手続き支援や第2の緊急連絡先として指定することができます。
そして、将来的な備えも万全です。万一、親御さまがご逝去のときには諸手続きのご相談や実家じまい・、相続手続きのサポートまで、親御さまの「いつも」と「これから」を見据えた多彩なサービスを提供しています。
このように「親サポセレクト」は、離れて暮らす親御さまの安全な生活を、子世代に代わってしっかりとサポートしてくれます。クレディセゾングループの会社だからこその安心感と、専門士業事務所や専門サービス会社との連携による万全のサービス体制で、高齢者の安全な暮らしを支えています。
離れて暮らす高齢の親御さまの安全を守るために、まずは「親サポセレクト」に問い合わせてみてはいかがでしょうか。
おわりに
高齢者の防犯対策は、安全で安心な生活を送るために欠かせないものです。一人暮らしの高齢者が増加する現代社会において、犯罪被害のリスクは年々高まっています。そのため、防犯意識を高め、具体的な対策を講じることが重要です。防犯カメラの設置やドア・窓の防犯対策、見守りサービスの活用など、適切な対策を行うことで、犯罪被害を防ぎ、より安全な暮らしを実現することができます。また、近隣住民や専門機関との連携を図ることで、より確実な防犯体制を築くことが可能です。早めの対策で、高齢者本人とその家族が安心して生活を送れる環境を整えましょう。
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