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借地権とは?借地がある場合に注意しておくべきこととは?徹底解説

借地権とは?借地がある場合に注意しておくべきこととは?徹底解説
北岡 修一(東京メトロポリタン税理法人グループ代表/税理士)

監修者
北岡 修一(東京メトロポリタン税理法人グループ代表/税理士)

西新宿にオフィスを構え、法人顧問の他、相続・相続税対策、事業承継、不動産に関する税務等に力を入れている。グループの不動産コンサル会社と連携し、具体的な対策から税務まで一貫したサービスを行っている。

借地権に関する相談は、非常に多いですね。しかも、その相談内容が複雑で、厄介な問題が多いように思います。今回はこの借地権の問題について、注意すべきことなど(特に税務について)述べていきたいと思います。

借地権とは

借地権とは、建物を所有するために土地を借りた場合の権利のことをいいます。借地権は、旧法(借地法)による借地権と、1992年8月1日から施行された借地借家法による借地権があります。以下、簡単に説明します。

旧法による借地権

今も、この旧法による借地権が多いと思います。1992年7月31日までに契約が締結されたものは、旧法の借地権になります。ほとんどの借地権は、古くに契約されたものを更新してきたものが多いためです。この借地権の存続期間は、木造などの場合は、契約時30年(最低20年)、更新後の期間は20年となっています。RCなど堅固な建物は、契約時60年(最低30年)、更新後の期間は30年となっています。

旧法は、賃借人の保護を重視しているため、地主に正当な理由がない限り、更新を拒絶することができません。そのため賃借人は、半永久的に土地を借りていることが可能であり、この点も借地法改正の契機になっています。

借地借家法による借地権

主なものは次の3つです。その他、建物譲渡特約付借地権などもありますが、ここでは割愛させていただきます。

普通借地権

契約期間は決めますが、更新することが可能な借地権です。存続期間は契約時30年以上、1回目の更新は20年以上、2回目以降は10年以上となっています。

一般定期借地権

住宅用などで土地を借りる場合、存続期間50年以上の期間を定めて契約を締結します。契約の更新はなく、契約期間満了後は建物を取り壊して、更地にして地主に土地を返還することになります。

事業用定期借地権

事業用で土地を借りる場合、存続期間10年以上50年未満の期間を定めて契約を締結します。一般定期借地権と同様に、契約の更新はなく、契約期間満了後は建物を取り壊して、更地にして地主に土地を返還することになります。

借地権の特徴

借地権が厄介な問題になるのは、次のような特徴があるためです。

土地は地主が所有

借地権は、あくまで地主が土地を所有し、賃借人が建物を建てている形態です。したがって、土地の登記名義は地主になっており、土地の固定資産税も地主が負担することになります。賃借人は、土地の固定資産税は支払わない代わりに、それも含めた地代を地主に支払うことになります。

建物は賃借人が所有(借地権という登記はない)

賃借人は自身の負担で建物を建築し、建物の登記をすることになります。借地権という権利の登記はありません。地上権や賃借権を登記することはできますが、一般的には行われていません。賃借人は建物を登記することにより、借地権の対抗要件を満たすことができます。なお、賃借人は当然、建物の固定資産税を支払うことになります。

権利金や更新料がある

地主が土地を賃貸する(借地権を設定する)ときは、賃借人はそれ相応の権利金(一時金)を支払う必要があります。また、契約期間が満了し、契約を更新するときは、これも相応の更新料を支払う必要があります。この更新料の額が結構高くなることも多く、賃借人とのトラブルになることも多いですね。

建て替え、増改築、売却時には承諾料が必要

借地上の既存の建物を建て替えたり、ある程度の規模の増改築をしたり、借地権と共に建物を売却するなどの場合は、地主の承諾を得る必要があります。また、その際には承諾料を支払う必要があります。この承諾料も契約書などで決まっていることは少なく、その都度、地主からの請求、あるいは話し合いにより決めることになります。なお、相続により相続人に名義が変更になる場合は、承諾料を支払う必要はありません。

借地権の返還や買戻しなどは話し合いが必要

契約期間中に借地を返還する、地主が借地権を買い戻す、逆に賃借人が底地を買い取りたいなど、賃貸借関係を終了させる場合もあります。このような場合には、その状況に応じた話し合いが必要になります。場合によっては、弁護士が入らないと解決しないこともありますね。

注意しておきたいこと

以上のような特徴のある借地権ですが、借地に建物を建てている場合は、将来の相続を見据え、次のようなことを確認、注意しておいて欲しいと思います。

契約書があるか

相当前から借地契約をしているような場合、土地の賃貸借契約書が見当たらない場合がよくあります。また、更新をして条件が変わっているのに、その契約書がない場合もあります。まずは契約書の存在を確認し、見当たらない場合は地主に確認して写しなどをもらっておくこと、あるいは契約書を再作成するなどしておくことをおすすめします。是非、後々トラブルのないようにしておきたいですね。

契約書の賃借人と建物の名義人が同じであるか

賃貸借契約書の名義と、建物の登記名義が違っている場合がよくあります。親の建物を建て替えるときに、子の名義で建て替えてしまったり、贈与などにより名義変更してしまっているような場合です。借地権は建物の登記があることにより、第三者への対抗要件となりますので、名義が違うような場合は、借地権を主張できなくなってしまう可能性があります。地主もあまりこういうことに意識が高くない場合もあり、契約や名義がいい加減になっていることも多いですね。ここはしっかりと、賃借人と建物の登記名義は同一にしておいてください。

税務署への届出をしてあるか

借地権に関する税務署への届出はいくつかあり、税務署も土地の権利関係には特に注意を払っています。

借地権者の地位に変更がない旨の申出書

これは、例えば、親が借地をしている土地の底地を、子どもが地主から買い取ったような場合です。地主から底地を買い取って欲しいといわれたが、親にお金がないようなときに、よくあると思います。子どもが底地を買い取った後、親と子どもの間で地代のやり取りがなくなると、親の借地権が子どもに贈与されたものとみなされてしまいます。そうなると、多額の贈与税がかかってきます。そうみなされないように、借地権者はあくまで親であるということを、税務署に届けておく必要があります。

借地権の使用貸借に関する確認書

これは、例えば、親が借りている土地に子どもが建物を建てたような場合です。建物の名義が子どもに変わってしまうと、親の借地権が消滅したかのような状況になってしまいます。そうなると、親から子どもに借地権が贈与されたことになりかねませんので、借地権はあくまで親にあり、子どもに使用貸借(無償で貸与)していることを確認する書類です。これを税務署に届けておく必要があります。

土地の無償返還に関する届出書

これは、例えば、個人の土地にその個人が経営する会社が建物を建てたような場合です。会社が個人に、借地権設定の権利金を支払わないと、会社は権利金の贈与を受けたものとみなされ、多額の税金が課される可能性があります(借地権の認定課税)。これを避けるためのひとつの方法として、将来土地を無償で返還する(すなわち、会社は借地権を持たない)旨を定めた届出書を出しておくものです。借地権は登記がないために、誰が所有しているのかが不明確です。そのために、このような補完的な届出が必要になってきます。

借地権は大きな相続財産になる

借地権は登記こそされていませんが、大きな相続財産になります。この点を把握しておかないと、思わぬ多額の相続税に慌ててしまうことになりかねません。借地権の相続税評価額は、土地の評価額が基本となります。国税庁が公表している路線価図には、路線価と共に借地権割合が記載されています。土地の評価額に借地権割合を乗じることによって、借地権の評価額を計算することができます。

借地権割合は、住宅地では60%~70%の地域が多くなっています。逆に底地は30%~40%ということになりますので、借地権の割合の方が高いということになります。路線価図は、国税庁のホームページで簡単に見ることができますので、是非、所有している土地の路線価と借地権割合を、確認しておくことをおすすめします。

チャンスがあれば借地契約を解消する

借地契約は、ひとつの土地を上(借地権)と下(底地)で共有しているようなものです。ただし、使用しているのは借地権者であり、底地を持っている地主は、登記上所有しているだけで、長期間、何も使用することはできません。不自然な形態であるといえなくもありません。もし、チャンスがあれば、借地契約を解消しておくことも考えておいた方が良いのではないでしょうか。例えば、次のような方法があります。

底地を買い取る

地主が「買い取って欲しい」と言ってきたときはチャンスです。地主に相続が発生した場合などに、よくありますね。その際、お金があれば良いのですが、ない場合には、前述のように子どもが出すことなども考えられます。その際には、上記の届出を忘れないようにしてください。

等価交換をする

借地がそれなりに広い場合、その一部について借地権を返上し、残った部分(今後も使用していく部分)の底地を譲り受ける、すなわち借地権と底地を等価交換する方法があります。この場合は、お互いが納得して等価になるように、交換する地積や境界などを調整する必要があるため、不動産業者等の専門家に入ってもらった方が良いでしょう。

なお、等価交換でお金が動かない場合でも、交換は譲渡の一種となり、譲渡所得税の対象となります。すなわち、確定申告をする必要があります。この場合、要件を満たすことにより、所得税の交換特例の適用を受けることができますので、この点は、税理士に相談していただければと思います。

一緒に売却する

売却する意向があれば、借地権付き建物として売却することもできますが、価格の問題や地主への承諾料などを考えると、あまり良い条件にならない可能性もあります。そのような場合は、地主さんも了解してくれるのであれば、一緒に土地建物を売却することも可能です。その方が、良い条件で売却できる可能性は高いと思われます。

以上、借地権に関わる問題は、ここに書いた以上に、ケースバイケースでさまざまな問題が出てきます。借地の問題は、戦後の古い慣習によるものも多いため、できれば借地状態は解消していくのが良いと私は思います。借地権に関しては、法務や税務なども含め難しい問題が多いですので、是非、専門家に相談していただければと思います。

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