生命保険を解約するデメリットは、いざという時の備えがなくなったり税金が発生したりする点です。毎月の支払いが難しい方や急にまとまったお金が必要になった方であれば、生命保険を解約すべきか迷っているのではないでしょうか。 そこでこのコラムでは、生命保険を解約するデメリットや解約せずに負担を軽くする方法などを紹介します。ご自身が解約すべきか、解約すべきであれば適切なタイミングがわかり、無駄なく保険を活用できるでしょう。
生命保険の解約が検討されやすいケースとは?
生命保険の解約が検討されやすいケースは、以下のとおりです。
- まとまったお金が必要になった
- 保険料の支払いが難しくなった
- 別の保険商品に乗り換えたい
解約のタイミングについて適切な判断ができるよう、一般的に検討されやすいケースを知っておきましょう。
まとまったお金が必要になった
引っ越し費用や親の介護費用、子どもの教育費など急な出費が発生することもあると思います。生命保険を解約すると、保障内容によっては数十万円、数百万円の解約返戻金を受け取れることもあるため、まとまったお金が必要な時に効果的でしょう。
保険料の支払いが難しくなった
契約当初は家計に余裕があり継続的に支払える金額だと思っていても、子どもが生まれたり転職したりすると保険料の支払いが難しくなることもあるでしょう。
保険料の払込期間が10年間、15年間、20年間で選べる終身保険の場合10年払いを選択すると、1回当たりの保険料の支払金額が最も大きくなります。また保険料の払い込みを半年払いや年払いにしていると、よりまとまったお金が必要になります。そのような際に生命保険の解約は有効です。
別の保険商品に乗り換えたい
時代やご自身のニーズが変わることによって、今の生命保険では保障内容が不十分に感じることもあるでしょう。そこで生命保険を乗り換えるために、今の保険を解約するケースもあります。
なお「生命保険の乗り換え」とは、今の保険を減額もしくは解約し、今の保険会社の別の商品や他社の商品に加入することです。
生命保険を解約するデメリット
生命保険の解約には、以下の5つのデメリットがあります。
- いざという時の備えがなくなる
- 無保険の期間が生じる可能性がある
- 同じ内容での新規加入が難しいこともある
- 解約返戻金が元本割れする可能性がある
- 課税の対象になる可能性がある
解約することでどの程度の支出が発生するか把握し、適切な対策を取りましょう。
いざという時の備えがなくなる
生命保険を解約すると、死亡や入院などの保障は終了します。例えば1日5,000円の入院給付金が出る医療保険に加入していた場合、解約した後に入院しても、入院給付金は出ません。基本的な保障(主契約)を解約すると特約も同時に解約になります。
生命保険を解約する際には、貯金がいくらあるか確認し、万が一のときに足りるか把握しておきましょう。また他に加入している保険の保障内容も改めて確認しておくと安心です。
無保険の期間が生じる可能性がある
今の保険を解約してから新しい保険に加入すると、死亡や入院などをしても保障されない期間が発生してしまいます。生命保険を乗り換える時には、新しい保険の責任開始日が過ぎてから今の保険を解約することが大切です。
責任開始日とは給付金や保険金が支払われるようになる日のことで、基本的には「申し込み」「告知・診査」「第1回保険料の払い込み」の3つが完了した日です。例えば1月1日に申し込み、1月10日に告知・診査、1月20日に第1回の保険料を払い込んだ場合には、1月20日から保障開始となります。
なおがん保険では「90日」または「3ヵ月」の待機期間があり、契約後すぐに保障が始まるわけではありません。
同じ内容での新規加入が難しいこともある
新たに生命保険に加入すると、年齢が上がったことや入院をしたことなどを理由に加入できる商品が限られるケースもあります。年齢が上がることで、保険料も上がるため注意が必要です。
商品を検討する際には、引受基準緩和型保険(一般的な保険よりも加入条件を緩和した保険)や無選択型保険(告知や診査がない保険)も含めて幅広く調べてみましょう。
解約返戻金が元本割れする可能性がある
生命保険には、解約返戻金(解約時に受け取れるお金)がある商品もあります。解約の時期によっては、それまでに払い込んだ保険料よりも解約返戻金の方が少なく、元本割れする可能性もあります。
解約返戻金の推移は、契約時に担当者が教えてくれるため、しっかりと確認してから解約すべきか検討しましょう。
課税の対象になる可能性がある
解約返戻金を一時金として受け取る場合、「一時所得」として所得税が課せられる可能性があります。
一時所得は「解約返戻金−払い込んだ保険料−特別控除500,000円」で計算され、その半分が課税対象になります。例えば解約返戻金が100万円で払い込んだ保険料が800,000円であれば、マイナスになるため、このケースにおける所得税は発生しません。
また年金形式で受け取る際には「雑所得」として所得税が課せられる可能性があります。契約者と受取人が異なる契約であれば、所得税ではなく贈与税の対象です。
今の生命保険を解約するならいつがタイミング?
生命保険を解約するタイミングは、以下のとおりです。
- ある程度の貯蓄ができた時
- ライフステージが変わった時
- 解約返戻金の元本割れ期間を超えた時
- 新たな生命保険の加入承認を得た後
解約のタイミングは加入者によって異なるため、ご自身にとって適切なタイミングを見極めましょう。
ある程度の貯蓄ができた時
貯蓄が十分にできたのであれば、生命保険の解約を検討しても良いでしょう。解約して保障がなくなっても治療費などを準備できるか計算することが大切です。ご家族とも話し合ってから解約の手続きに入りましょう。
ライフステージが変わった時
出産や子どもの独立、退職など、ライフステージが変わると保険を解約する方もいます。具体的には、「子どもが大学を卒業するまでの親の万が一の保障として500万円の養老保険に入っていたものの、子どもが高校卒業後に就職することになり解約するケース」などです。
予定していた計画が変わることがあるため、その際に生命保険の解約を検討するのは効果的でしょう。
解約返戻金の元本割れ期間を超えた時
解約返戻金をより多く受け取るためには、元本割れの期間を過ぎたタイミングで解約するのが効果的です。具体的には保険料の払い込み期間を過ぎると、解約返戻金が増える場合があります。
解約返戻金の推移は保険証書で確認可能です。ただし、解約することで保障がなくなるため注意が必要です。例えば終身保険であれば、死亡保障がなくなります。
新たな生命保険の加入承認を得た後
商品によっては告知や診査があるため、加入できないケースもあります。このリスクも踏まえると、新たな保険の責任開始日が過ぎてから解約するのが安心です。
生命保険を解約する流れと方法
生命保険はすぐに解約できるわけではありません。解約返戻金の振り込みも保険会社によってタイミングが異なります。ここでは、生命保険を解約する流れと方法について詳しく解説しましょう。
生命保険を解約する流れ
一般的に、生命保険は以下の手順で解約します。
- 保険会社の担当者やコールセンター、窓口に解約を申し出る
- 解約の種類や本人確認書類などを提出する
- 保険会社が書類を受領し解約となる
- 解約返戻金が口座に振り込まれる
保険会社によって解約の手続きは異なるため、WEBサイトを見たり保険会社に問い合わせたりして確認しましょう。
解約までにかかる期間の目安
生命保険の解約手続きの開始から完了までは1〜2週間程度かかります。基本的に解約日は保険会社が書類を受領した日です。
解約返戻金の金額目安
生命保険を解約する際には解約返戻金を受け取れる場合があります。以下に具体的なケースを挙げて、解約返戻金を算出しました。
契約者 | 30歳・男性 |
保険金額 | 500万円 |
保険料払い込み期間 | 65歳まで |
毎月の保険料 | 9,420円 |
払い込み保険料の総額 | 3,956,400円 |
保険料払い込み期間直後の解約返戻金 | 4,416,600円 |
以上の条件で保険料払い込み期間の直後に解約すると、解約返戻率は「4,416,600円÷3,956,400円×100%」で約111.6%となります。
契約者 | 30歳・男性 |
保険金額 | 200万円 |
保険料払い込み期間 | 終身 |
毎月の保険料 | 2,924円 |
20年間の払い込み保険料 | 701,760円 |
20年経過時の解約返戻金 | 485,800円 |
以上の条件で加入から20年経過時に解約すると、解約返戻率は「485,800円÷701,760円×100%」で約69.2%となります。
参照元:アクサダイレクトの終身保険
解約返戻金の振込時期
解約返戻金の口座への振込は、解約日から3~4営業日程度です。保険会社により日数は異なるため、事前に確認しておくと安心でしょう。
解約請求できる方
生命保険の解約手続きができるのは、原則として契約者本人です。ただし契約者が認知症になるなどの理由で手続きが難しい場合には、配偶者や子どもなどを代理人として解約できるケースもあります。
解約前に条件を保険会社に確認しておきましょう。
生命保険を解約せず支払いの負担を軽くする方法はある?
保険料の支払いが厳しいことを理由に、生命保険の解約を検討している方もいると思います。ここでは、生命保険を解約せずに保険料の負担を軽減する方法をご紹介します。
保険金額を減額する
生命保険の保険金額を一部解約することで、保険料を抑えられます。具体的には、「死亡保険金2,000万円で契約したものの、子どもが独立し手厚い保障がいらなくなり1,000万円に減額すること」などです。
保険金額を減額することでどのくらい保険料を抑えられるか、保険金額を減らすことのリスクを担当者に聞き、総合的に判断しましょう。
払済保険に変更する
保険料の負担が重い時には、払済保険に変更するのも効果的です。払済保険とは解約返戻金を保険料の支払いに充てて、同じ保険期間で保障を継続していく方法です。
払済保険のメリットは、保険料の負担がなくなる点です。一方で保険金額が減額され、特約は消滅します。
全ての保険で払済保険に変更できるわけではないため、あらかじめ確認しておくと安心です。
延長保険に変更する
延長保険に変更する方法もあります。延長保険とは解約返戻金を保険料の支払いに充てて、同じ保険金額で保障を継続していく方法です。
延長保険のメリットは、払済保険と同じく、保険料の負担がなくなる点です。一方で保険期間が短くなり、特約は消滅します。
契約者貸付を活用する
急にお金が必要になった時には、契約者貸付制度を活用しましょう。契約者貸付制度とは解約返戻金の一部からお金を借りる制度で、返済時には保険会社所定の利息が付きます。
ただし返済をしないと保険が失効・解約される場合もあるため、充分に検討した上で利用しましょう。
おわりに
生命保険を解約すると、いざという時の備えがなくなったり、元本割れする場合があったりとデメリットもあるため、慎重に検討することが大切です。
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