奨学金は繰り上げ返済できますが、自身のライフプランなどを踏まえたうえで計画的に返済しなければなりません。このコラムでは奨学金を繰り上げ返済する際のメリットや注意点について解説します。奨学金の種類などと照らし合わせることで、取るべき行動がわかるでしょう。
1.奨学金の種類を確認しよう
奨学金の繰り上げ返済を検討している方は、まず奨学金の種類を確認しましょう。奨学金は繰り上げ返済が可能ですが、繰り上げ返済することによるメリットは奨学金の種類によって異なります。奨学金の種類は独立行政法人日本学生支援機構が運営するスカラネット・パーソナルで確認可能です。
繰り上げ返済について、利息がかかっているタイプの奨学金の場合であれば、早い段階で返済した方がトータルでお得になりますが、利息がかかっていないタイプの奨学金の場合は繰り上げ返済をしても返済総額は変わりません。
奨学金は以下の2つのタイプがあります。それぞれについて解説します。
- 貸与型奨学金
- 給付型奨学金
1-1.貸与型奨学金
貸与型奨学金は名前のとおり貸与されたものであるため、返還しなければなりません。借りた金額と月々の返済額によって返済期間は異なりますが、最長で20年間までと定められています。また、貸与型奨学金はさらに2種類の奨学金に分けられます。第1種と第2種で繰り上げ返済するメリットは大きく異なるため、自身の奨学金タイプに合わせて繰り上げ返済を検討しましょう。それぞれについて解説します。
- 第1種奨学金
- 第2種奨学金
・第1種奨学金
第1種奨学金とは、利息がかからないタイプの奨学金です。学業で優れた成績を収めている学生や、家庭の経済状況によって就学が困難な学生を利用対象としています。第1種奨学金には利息がかからないため、月々の返済は元金部分のみです。そのため、長期間で返済しても、繰り上げ返済をしても、返済額は変わりません。返済額は変わらないものの、早い段階で奨学金の返済を終わらせたい方は、繰り上げ返済を検討するのもいいでしょう。
・第2種奨学金
第2種奨学金とは、借入額に利息がかかるタイプの奨学金です。第1種奨学金よりも利用できる学生の幅が広いことに加え、第1種奨学金を利用している学生も併用可能です。在学中は、利息がかかりませんが、卒業後に利息が発生するため、なるべく早く返済を終えた方がトータルの返済額を抑えられます。
なお、日本学生支援機構の奨学金の繰り上げ返済は期間短縮型であるため、繰り上げ返済をしたとしても月々の返済額は減りません。あくまでも期間が短縮されるだけという点に注意しましょう。
1-2.給付型奨学金
給付型奨学金は、貸与型奨学金と異なり返還義務がありません。また、奨学金の多くは家庭の経済状況に加え、一定以上の学業成績が必要ですが、給付型奨学金は成績だけで判断するのではなく「学ぶ姿勢」を重視しています。そのため、受給するためには面談やレポートの提出が必要です。給付型奨学金の対象となれば、大学・専門学校などの授業料・入学金も免除または減額されます。
2.奨学金を繰り上げ返済する3つのメリット
奨学金の種類がわかったとしても、奨学金を繰り上げ返済するメリットを理解できなければ、自分が繰り上げ返済するべきなのかどうかがわかりません。そこで本章では、奨学金を繰り上げ返済する3つのメリットについて解説します。メリットの内容と自分自身の状況を照らし合わせ、繰り上げ返済するべきかを判断しましょう。奨学金を繰り上げ返済する3つのメリットは以下のとおりです。
- 返済期間が短縮され利息分を節約できる
- 機関保証の保証料が一部返金される場合がある
- 繰り上げ返済の手数料はかからない
2-1.返済期間が短縮され利息分を節約できる
繰り上げ返済をすることで、返済期間が短縮され利息分を節約できます。例を挙げると、240万円の奨学金を金利1%、返済期間15年で返済する場合、総返済額は2,585,413円です。しかし、10年間返済したタイミングで残りの5年分を一括返済すると、本来支払う予定であった利息分21,505円を節約できるのです。
2-2.機関保証の保証料が一部返金される場合がある
借入時に機関保証を選択していた場合、繰り上げ返済を行うことによって、保証料の一部が返金されるケースがあります。日本学生支援機構のホームページでは、在学中や在学猶予中など、返還開始前に一括返済することで、約7割の保証料が返還される旨の記載があります。返還開始前の一括返済で約7割の返還であるため、返還開始後の繰り上げ返済ではあまり大きな金額は期待できませんが、保証料の一部が返金される可能性があることは覚えておきましょう。
2-3.繰り上げ返済の手数料はかからない
奨学金の繰り上げ返済には手数料がかかりません。銀行のローンなどであれば繰り上げ返済時に手数料がかかる場合があるため、計画的に返済しなければなりません。一方、奨学金の繰り上げ返済は手数料がかからず、資金に余裕がある際にこまめに繰り上げ返済することが可能です。自分の都合のいいタイミングで適宜繰り上げ返済できるのは、大きなメリットでしょう。
3.奨学金を繰り上げ返済する際の3つの注意点
奨学金を繰り上げ返済するメリットがわかりましたが、繰り上げ返済時の注意点も忘れてはいけません。奨学金を繰り上げ返済する際の3つの注意点は以下のとおりです。
- 繰り上げ返済は返済期間短縮型のみ
- あくまでも余裕がある時に返済する
- 親が繰り上げ返済する場合には金額を確認する
また、奨学金は以下のような流れで繰り上げ返済をします。
- スカラネット・パーソナルにログイン(PC・スマートフォン可)
- 各種届願・繰上を選択
- 繰上返還申込を選択
- 全額繰上・一部繰上のどちらかを選択
- 金額・回数を選択
スカラネット・パーソナルが利用できない場合は、繰上返還申込書を郵送またはFAXで申し込みできます。繰り上げ返済の注意点を理解したうえで、実際に手続きをしてみましょう。
3-1.繰り上げ返済は返済期間短縮型のみ
奨学金の繰り上げ返済は、返済期間短縮型のみです。通常の銀行ローンなどであれば、返済期間を短縮するか、月々の返済額を減らすか選択できますが、奨学金の場合は返済期間短縮型のみです。そのため、月々の支払いが苦しいという理由で繰り上げ返済をしたとしても、効果はありません。あくまでも支払期間が短縮されるだけであり、月々の返済額は減らないため注意しましょう。
3-2.あくまでも余裕がある時に返済する
奨学金はあくまでも余裕がある時に繰り上げ返済しましょう。特に第1種奨学金の場合は利息がかかっていないため、繰り上げ返済をしても金銭的なメリットはありません。早いうちに奨学金を支払い終えて心理的に解放されたいというのは多くの方が考えることですが、直近で大きな支払いが控えていないかなど、ほかでお金を使う予定を考えたうえで返済する必要があります。
また、奨学金はほかのローンなどと比べて金利が低い傾向にあります。奨学金を返済するために現金を利用し、ほかの支払いで金利の高いローンを利用するといったお金の使い方は損をしてしまうため注意しましょう。
3-3.親が繰り上げ返済する場合には金額を確認する
親が奨学金を繰り上げ返済する場合には金額に注意しなければなりません。奨学金を組むのは学生であるため、親が返済する場合は贈与に該当します。贈与税の非課税枠は年間110万円です。つまり110万円までの繰り上げ返済であれば、非課税で返済できますが、110万円を超えてしまった場合、贈与税がかかってしまいます。このように、親が返済する場合には金額に気をつけたうえで返済しましょう。
4.繰り上げ返済の原資を投資にまわすという考え方もあり
奨学金を繰り上げ返済する注意点について解説しましたが、奨学金の繰り上げ返済の原資をあえて返済せずに、投資にまわすという考え方もあります。通常のローンなどであれば金利が高いため、投資にまわすよりもローン返済を優先しますが、金利が低い、もしくは金利が0%の奨学金だからこその考え方です。繰り上げ返済の原資を投資にまわす考え方について詳しく解説します。
4-1.利率と利回りを比較して考える
まずは、奨学金の利率と投資の利回りについて考えてみましょう。第1種奨学金は利率は0%で利息がかかりません。第2種奨学金は利息がかかるものの、最大で3%までと決められています。一方、iDeCoやつみたてNISA投資で購入できる投資商品の利回りは、あくまでの過去の実績からのトレンドにはなりますが、長期で見ると3〜5%程度の商品が多いといわれています。
例えば、奨学金を金利1%、返済期間15年で、10年経過した時点の残高は100万円だったとします。100万円を繰り上げ返済することで、今後5年間で支払う予定であった利息は約25,000円がお得に。しかし、リスクはありますが、100万円を繰り上げ返済せずに、年利3%で複利で投資にまわすことで5年で約160,000円もの利益を得られることも期待できます。
このように利率の低い奨学金だからこそ、一括返済するのではなく、投資にまわすといった選択肢も考えられるのです。
4-2.リスクを抑えて投資し、将来の返済原資をつくる
奨学金の利率と投資の利回りを踏まえたうえで、リスクを抑えて投資し、将来の返済原資を作るのも1つの手段です。
5.奨学金の返済が難しい時の対処法
奨学金は返済期間短縮型のみであるため、繰り上げ返済をしたとしても月々の支払いを抑えることはできません。毎月の支払いが苦しく返済額を抑えたいと考えている方が取るべき対処法は以下の2つです。
- 減額返還制度の利用
- 返還期限猶予制度の利用
2つの制度を利用することで、毎月の奨学金返済に困っている方でも、生活にゆとりを持てます。それぞれについて解説します。
5-1.減額返還制度の利用
減額返還制度を利用することで、毎月の返済額を抑えて返済できます。しかしながら、すべての方が減額返還制度を利用できるわけではありません。ケガや病気といった経済的な事情によって、返済が困難になった場合、毎月の返済額が1/2もしくは1/3に減額されます。減額返還制度を利用した場合でも利息部分の金額は変わらず、返済期間が長期化する仕組みです。
5-2.返還期限猶予制度の利用
返還期限猶予制度を利用することで返済期限を先延ばしにできます。減額返還制度と同様に、経済的な事情によって返済が困難となった方が利用できる制度です。猶予は最長10年間延ばせるため、現在経済状況が苦しい方でも、立ち直るきっかけを掴めるでしょう。
奨学金の返済が苦しいという方は、滞納する前にこれら2つの制度を有効に活用しましょう。奨学金の返済を滞らせてしまうと、信用情報に影響が出るリスクがありますが、これらの制度を利用している場合であれば心配いりません。
なお、奨学金の返済が苦しい状態になった時や急な支出に備えて、カードローンを利用できるようにしておくのも対策の1つです。クレディセゾンの「マネーカード」は、資金の利用目的が自由であることに加え、年会費・入会費が0円であるため、保有コストがかかりません。全国のコンビニ・ATMで利用できるため、急な支出にも備えられます。
資金面で不安がある方は、いざという時の1枚を所持しておきましょう。
MONEY CARD(マネーカード)の説明動画です。(音声が出ます。音量調整にご注意ください。)
6.奨学金はライフプランに応じて繰り上げ返済しよう
奨学金は足りない就学費用を借りられる素晴らしい制度ですが、卒業後に返済が重荷になってしまうケースも少なくありません。特に利息がかかるタイプの奨学金は、返済期間が長引くほど返済額も増えてしまうため、なるべく早くに返済したいのが本音でしょう。
しかしながら、奨学金の利率は一般的なローンと比べて決して高いものではありません。奨学金をまとめて返済したあとに、ほかの支出でローンを組むようなことがあっては本末転倒です。奨学金の利率と投資の利回りによっては繰り上げ返済するのではなく、投資にまわすといった考え方も重要です。奨学金を繰り上げ返済する際には、直近で大きな支払いがないかや、将来的にまとまった資金が必要にならないかなどライフプランを踏まえたうえで検討しましょう。