出産費用が足りないときはどうしたらいいのでしょうか。出産費用は高額ですが、支援制度を利用すれば実際の自己負担額はそれほど大きくありません。本記事では、出産にかかる費用や利用できる支援制度について解説します。支援制度を活用しても資金が足りない時の対策も合わせて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
出産費用は平均約50万円かかる
厚生労働省の「出産費用の見える化等について(2023年9月)」のデータによると、出産にかかった費用の平均額(令和4年度)は48万2294円となっています。
実際に2023年度の出産費用(室料差額等を除く)の平均を見てみましょう。
全体(異常分娩を含む) | 正常分娩のみ | |
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全施設 | 468,756円 | 482,294円 |
公的病院 | 420,482円 | 463,450円 |
私的病院 | 490,203円 | 506,264円 |
診療所(助産所を含む) | 482,374円 | 478,509円 |
医療機関が公立・私立かによって出産費用は異なりますが、目安として40万〜55万円程度を見積もっておくと安心でしょう。
また、出産費用は地域によっても金額が大きく異なります。
公的病院の出産費用が高額な都道府県を上位から5つ見ていきましょう。
都道府県 | 出産費用(平均額) | 中央値 | |
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1位 | 東京都 | 562,390円 | 542,630円 |
2位 | 茨城県 | 531,941円 | 533,845円 |
3位 | 神奈川県 | 512,349円 | 515,625円 |
4位 | 山形県 | 507,854円 | 513,760円 |
5位 | 新潟県 | 501,966円 | 500,265円 |
なお、出産費用が1番低かったのは鳥取県の359,287円で、1位の東京都562,390円と比べると203,103円もの差があります。費用の高い地域で出産予定の方は、資金を多めに準備しておきましょう。
ちなみに、2024年5月に厚生労働省が「出産なび」を開設したことにより、出産前に費用やサービスなどの情報を得やすくなりました。「出産なび」では分娩を扱う全国およそ2,000の病院や診療所の費用やサービスを一覧で確認でき、さらに自分の住む地域の出産費用の相場を調べられます。
出産費用は平均で50万円前後かかりますが、全額自己負担するわけではありません。次の章では、出産の際に活用できる制度について紹介します。
出産費用に活用できる制度
正常分娩の場合は原則として医療保険が適用されないため、100%自己負担となります。ただし、帝王切開などの異常分娩と判断されるときには医療保険が適用されます。
また、公的な制度の利用で出産費用の自己負担額が軽減されるため、こちらも活用しましょう。具体的には以下の制度が設けられています。
- 出産育児一時金
- 出産手当金
- 高額療養費制度
- 入院助産制度
- 産科医療補償制度
- 自治体で実施している助成制度
それぞれの概要や受け取れる金額の目安を見ていきましょう。
出産育児一時金
出産育児一時金とは、基本的に子ども1人あたり50万円が支払われる手当金で、多胎児であれば人数分(双子であれば100万円、三つ子であれば150万円)受け取れる支援制度です。ただし妊娠週数が22週に達していないなど、産科医療補償制度の対象外となる場合は、支給額が48.8万円まで減額されます。
なお、健康保険の被扶養者も出産育児一時金を受け取れます。健康保険に加入している配偶者に受給手続きをしてもらいましょう。
出産育児一時金が支給される条件
出産育児一時金を受給できる条件は以下のとおりです。
- 健康保険に加入している、あるいは健康保険に加入している方の被扶養者である
- 妊娠4ヵ月(85日)以上で出産(早産、死産、流産、経済的理由による人工妊娠中絶も含む)
海外で出産した場合、出産を担当した海外の医療機関等医師や助産師の証明書を取得して、出産日の翌日から2年以内に申請すれば支給対象となります。また、外国籍の方も出産育児一時金を通常どおり請求できる可能性があるため、自治体の健康保険窓口に相談してみましょう。
出産育児一時金を受け取れるのはいつ?
出産育児一時金の受け取り申請方法により異なります。受け取りの申請方法は、直接支払制度、受取代理制度、事後申請の3種類です。
直接支払制度と受取代理制度では、直接医療機関等に出産育児一時金が支給され、出産費用が50万円を上回った分をご自身で退院時に支払います。
事後申請を行う場合、受給できるのは手続き完了後から約2週間〜2ヵ月後です。出産育児一時金の申請期限は、出産日の翌日から2年以内なので、できるだけ早く申請しましょう。
直接支払制度を活用しよう
直接支払制度とは出産育児一時金の額を限度として、医療機関等が本人に代わり、健康保険組合に対し出産費用を請求する制度です。直接支払制度を利用した場合、健康保険組合は、被保険者に支給する出産育児一時金を医療機関等に直接支払うことになります。
直接支払制度の利用により、医療機関等の窓口で支払う出産費用は出産育児一時金を超過した金額のみとなります。また、出産後に健康保険組合への出産育児一時金を申請する必要なくなる点もメリットです。なお、出産費用が出産育児一時金の額より少ない場合は、申請すれば差額を受け取れます。
出産費貸付制度の概要
出産費貸付制度では、出産に関する費用を必要とする場合、出産育児一時金支給見込み額の8割を限度額として無利息で貸付が受けられます。協会けんぽ(全国健康保険協会)、組合健保、国民健康保険、共済組合など加入している健康保険によって手続きが異なります。
なお、政府が2023年12月に閣議決定した「こども未来戦略」では、2026年度を目途に出産費用の保険適用を目指す方針が明記されました。将来、出産費用が保険適用されるようになれば、制度の変更も考えられます。
出産手当金
産前産後に休業し、給料を受け取れない場合には、加入している健康保険から出産手当金を受け取れます。支給されるのは、出産前42日間と産後56日間の合計98日間の給料に関して、過去12ヵ月分の給料から1日あたりに換算して3分の2に相当する金額の日数分です。なお多胎児を出産した場合は、出産前98日間と産後56日間の154日間に対して出産手当金が支払われます。
出産手当金を受け取れるのはいつ?
受給できるのは、出産手当金の申請受理から約1〜2ヵ月後程度です。申請受理が完了後、送られてくる出産手当金支給決定通知書で支給日を確認できます。出産手当金の申請期限は産休開始の翌日から2年以内であるため、できるだけ早く申請しましょう。
高額療養費制度
正常分娩は保険適用外ですが、帝王切開は保険適用のため、高額療養費制度の対象です。高額療養費制度とは、同一月(1日から月末まで)にかかった医療費の自己負担額が一定額を超えた場合、超えた分があとで払い戻される制度です。自己負担限度額は、年齢および所得額に応じて異なります。
高額療養費の支給申請期限は、診療を受けた月の翌月初日から2年です。一般的に、高額療養費制度は申請から支給まで3ヵ月程度かかります。そのため、帝王切開の予定がある方は、事前に「限度額適用認定証」を取得しておくと良いでしょう。これを取得しておくと、医療機関での窓口支払いが自己負担限度額までとなるため、資金準備の負担が少なくなります。
また、医療費の支払いが困難な場合は、無利息の「高額医療費貸付制度」を利用できる可能性があります。これは、高額療養費を申請して支給されるまでの期間に、高額療養費支給見込額の8割相当額を無利子で借り入れできるため、医療費支払いに充てる資金として便利です。
入院助産制度
通常、妊娠・出産は病気ではないため、正常分娩では健康保険が適用されず、出産費用はすべて自己負担となります。入院助産制度は、生活保護を受給している方や健康保険が使えない方など、経済的な理由で妊産婦の出産費用を負担できない妊産婦を対象に、出産費用を助成する制度です。世帯の所得や健康保険の有無などによって、対象者や助成額が異なります。
事前に申請して入所措置の決定を受け、指定された助産施設で入院・出産した場合に、出産費用の給付が受けられます。ただし、指定外の助産施設で出産した場合や、出産育児一時金が50万円以上支給される場合、または産科医療補償制度の保険が締結されている場合は、入院助産制度を利用できないことがあります。
また、出産後に申請しても入院助産制度の利用はできません。申請の時期は自治体ごとに異なるため、早めにお住まいの地域の福祉窓口に相談しましょう。例えば、東京都世田谷区では、出産予定日の2ヵ月前までの申請が必要です。
産科医療補償制度
産科医療補償制度とは、分娩時の予期せぬ事態により重度の脳性麻痺となった場合に、子どもと家族の経済的負担を補償する制度です。2015年以降に分娩機関の医学的管理下で出生したお子様が、以下の補償対象基準に該当し、「脳性麻痺」と認定されると、補償金を受け取ることができます。
補償対象の基準は以下の3点です。
- 「在胎週数32週以上かつ出生体重1,400g以上」で出生した場合、または「在胎週数28週以上で低酸素状況を示す所定の要件」を満たして出生した場合
- 先天性や新生児期等の要因によらない脳性麻痺であること
- 身体障害者手帳1・2級相当の脳性麻痺であること
補償申請は、子どもの満5歳の誕生日を過ぎるとできなくなります。手続きは早めに行うようにしましょう。
自治体で実施している助成制度
自治体によっては、出産費用として活用できる助成制度を実施しているケースがあります。
東京都福祉局「東京都・子育て応援事業~赤ちゃんファースト~」では、妊娠時は妊婦1人あたり5万円相当、出産後は児童1人あたり10万円相当の経済的支援を実施しています。自治体による具体的な支援内容は、産前産後サポート事業や多胎妊産婦等支援、父親支援などです。出産費用だけでなく、妊娠や出産に関する悩みもお住まいの区市町村の保健センターで相談できます。
出産費用が足りないときに利用できる方法
出産の際は、さまざまな費用がかかります。医療機関に支払う費用だけでなく、赤ちゃんの衣類や小物、マタニティ向けの下着や部屋着、外出着なども必要になるでしょう。また、仕事を休んでも一定期間は出産手当金を受給できますが、収入は下がってしまうため、生活費にも影響が及ぶかもしれません。
出産関連の費用が不足するときは、次の方法を検討してみましょう。
- 親族などから借りる
- クレジットカードでキャッシングを利用する
- ローンを利用する
それぞれメリットや注意点を解説します。
親族などから借りる
緊急入院などにより、予定よりも産前休業や産後休業を長く取るケースもあるでしょう。収入が減るだけでなく、入院や手術などの医療費がかさみ、予定していたよりも出産費用が増えるかもしれません。
このようなときは、事情を親などの親族に話し、お金を借りるのもひとつの方法です。いつ頃に返済できそうか、どの程度必要なのか説明して理解を得たうえで、借用書を作成しておきましょう。借用書がないと贈与と考えられるため、年間110万円を超えると贈与税の対象となります。
クレジットカードでキャッシングを利用する
キャッシング枠のあるクレジットカードを所有している場合は、キャッシング機能を活用してお金を借りることもできます。改めての審査はなく利用できるため、緊急時にも適した方法です。お持ちのクレジットカードにキャッシング機能がついているかどうかわからないときは、クレジットカードの会員マイページなどで確認できます。
クレジットカードを持っていない場合、あるいはクレジットカードはあるがキャッシング機能がついていない場合には、新たに申し込みが必要です。キャッシング枠を付けて新規にクレジットカードに申し込むか、すでに所有しているクレジットカードの発行会社に連絡し、キャッシング枠を申請しましょう。いずれも審査があるため、すぐには利用できない点に注意が必要です。
まだクレジットカードをお持ちでなければ、最短5分で手続きが完了する「SAISON CARD Digital(セゾンカードデジタル)」がおすすめです。「SAISON CARD Digital」は国内初の完全ナンバーレスカードです。クレジットカード番号はスマホの公式アプリに直接表示され、後日郵送で届くプラスチックカードにはクレジットカード番号が記されていないため、セキュリティ面でも安心できます。また、キャッシングも併せて申し込みできます。
SAISON CARD Digitalについて詳しく知りたい方は以下をご覧ください。
ローンを利用する
ローンの利用で不足する費用を用意できる可能性があります。ローンにはさまざまな種類がありますが、出産費用のように必要な金額がある程度分かっているときは、クレジットカードのキャッシングよりも金利が低めなカードローンやフリーローンがおすすめです。フリーローンは、最初にまとまった資金を借りるため、返済計画を立てやすい点もメリットです。住宅ローンやリフォームローンとは異なり、使い道が指定されていないため、出産費用などにも活用できます。
セゾンファンデックスのかんたん安心フリーローンは、出産費用のように一時的な利用に適したローンです。医療機関での支払いが不足するときなどにも活用できるでしょう。
出産費用の支払い計画を立ててみよう
出産にはさまざまな費用がかかります。入院する費用や分娩費だけでなく、赤ちゃんや妊産婦の衣類、哺乳瓶などのこまごまとしたものも必要になるでしょう。また、正常分娩は医療保険が適用されません。医療機関によっても費用は変わるため、事前に出産費用を見積もっておきましょう。
また産後の経過が良くなかったり、赤ちゃんの健康不安などにより入院が長引くケースも想定されるため、家族が通いやすい医療機関を選ぶことも大切です。。
出産費用の支払いが難しそうなときには、親族から借りる、クレジットカードのキャッシングやローンなどを活用する方法があります。出産後は一時的に収入が減ることもあるため、無理のない範囲で返済額を設定しておきましょう。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。