住宅ローンを借りるためには金融機関の審査に通らなければいけません。しかし以下のような理由で、審査に通るか不安な方もいるのではないでしょうか。
- 過去にクレジットカードの返済を滞納したことがある
- 現在の収入や職業で住宅ローンの審査に通るか不安
また、審査に落ちた理由を知り、改善したいと考えている方もいるでしょう。
この記事では、住宅ローンの申し込み資格、審査に通らない理由や対処法などを解説します。この記事を一読すれば、審査に通過しやすくなるポイントもわかります。これから住宅ローンに申し込もうと考えている方はぜひ参考にしてください。
- 住宅ローンとは、住宅購入に必要な資金を補うローンです。住宅ローンは金利が低く、返済期間も長く設定されており、マイホーム購入のハードルを下げることができます。
- 誰でも必ず審査に通るわけではありません。住宅ローンの融資の可否は、年齢、年収、勤務先などのさまざまな基準で総合的に判断されています。
- 審査に通る確率を高めるためにも、審査に通らない場合の理由・対処法をしっかり確認してから審査に進みましょう。
住宅ローンの申し込み資格
住宅ローンは本審査前に、事前審査が行われます。住宅ローンの申し込み資格を満たしていないと、事前審査に通らず、本審査にも進めない可能性が高いです。
そのため、住宅ローンの審査に申し込む前に、以下の申し込み資格を満たしているかチェックしましょう。
- 借入時・完済時の年齢要件
- 国籍
- 資金使途
- 団体信用生命保険への加入の可否
- 金融機関の営業エリア
順番に確認していきましょう。
借入時・完済時の年齢
金融機関ごとに、住宅ローンを組める年齢が異なります。借入時の年齢は20歳以上70歳以下、完済時の年齢は80歳以下としているのが一般的です。また、多くの金融機関では、住宅ローンの最大借入期間は35年です。
年齢の要件を満たしていないと、事前審査の段階で落ちてしまいます。また45歳以上で住宅ローンに申し込む場合、借入期間が35年以下になってしまいます。
国籍
住宅ローンでは国籍に関する要件も設けられています。例えば、三菱UFJ銀行の住宅ローンを利用できる方の条件は「日本国籍の方、または永住許可を受けている外国籍の方」です。
出典:三菱UFJ銀行「住宅ローン P1」
なお永住許可を得ていない場合でも、配偶者が日本国籍もしくは永住許可を得ていて、かつ配偶者が連帯保証人となるなどの要件を満たすことで申し込みできる金融機関もあります。
資金使途
住宅ローンの資金使途は金融機関ごとに定められています。資金用途の一例は以下のとおりです。
- 新築物件の購入(マンション、戸建て)
- 中古物件の購入(マンション、戸建て)
- 住宅の新築(注文住宅)
- 増改築(リフォーム)
- 他の金融機関から借り入れ中の住宅ローンの借り換え
- 諸経費(登記費用や固定資産税など)
※セカンドハウスは対象外
特に増改築やリフォームは、住宅ローンの資金用途の対象外としている金融機関もあるため、注意が必要です。
団体信用生命保険への加入の可否
民間の金融機関では、団体信用生命保険(以下、団信)への加入を原則求められます。
団信とは、住宅ローンの契約者が万が一、返済途中で病気やケガなどにより返済できなくなった場合に、残債を保険金でカバーする保険です。
金融機関は契約者の団体信用生命保険加入により、融資を回収できなくなるリスクを抑えられます。しかし、この団体信用生命保険には必ずしも加入できるとは限りません。
健康上の問題がある場合には、団体信用生命保険に加入できず、審査に進むこともできないので注意が必要です。
金融機関の営業エリア
多くの金融機関、特に営業エリアが限られている地方銀行や信用金庫などは、営業エリア内に居住または勤務していることを条件に融資を行います。住宅ローンの対象となるのも、金融機関のエリア内の物件のみであることがほとんどです。
国土交通省の「令和5年度民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書 P19」によると、90.4%の金融機関が「金融機関の営業エリア」を審査項目にしていると回答しています。そのため、購入したい物件が金融機関のエリア内にないと、事前審査にも通らない可能性が高いです。
地方銀行や信用金庫などの金融機関に申し込む際は、公式サイトや窓口で事前に営業エリアを確認しましょう。例えば横浜信用金庫は公式サイトで、営業エリアを以下のように公開しています。
【神奈川県】
横浜市 | 厚木市 |
川崎市 | 大和市 |
横須賀市 | 海老名市 |
鎌倉市 | 座間市 |
藤沢市 | 綾瀬市 |
茅ヶ崎市 | 三浦郡 |
逗子市 | 高座郡 |
三浦市 | 愛甲郡愛川町 |
相模原市 |
【東京都】
大田区 | 町田市 |
出典:横浜信用金庫「営業地区」
住宅ローンの審査基準
住宅ローンの申込資格を満たしているだけでは審査に通りません。各金融機関が設定する独自の住宅ローンの審査基準を満たす必要があります。
住宅ローン審査でチェックされるのは、以下のような項目です。
- 返済が可能かどうか
- 個人信用情報に問題がないか
- 購入対象である住宅に担保価値があるか
返済が可能かどうか
申し込み者の返済能力は審査で細かくチェックされます。返済能力は以下の項目でチェックします。
- 年収
- 勤務先
- 勤務年数
- 返済負担率(返済比率)
- 他社からの借り入れの有無
年収が高いほど滞納リスクが低いので審査には有利です。また、勤務先が上場企業や公務員のように安定していると、審査が有利に進みます。
また勤務先だけではなく勤続年数も重要な審査項目です。勤続年数が短いと、転職のリスクが高く、収入が安定しないと判断されるためです。
年収に対して問題なく返済が行えるかを調べる指標として「返済負担率」があります。返済負担率(返済比率)とは、住宅ローンの返済額に自動車ローンなど他の借り入れも含めた年間返済額が年収に占める割合です。
返済負担率が高いと、年収に占める返済額の割合が大きくなるため、滞納しやすいと見なされます。返済負担率の計算式は「ローンの返済額÷年収×100」です。一般的に返済負担率が35%以下だと、余裕を持って返済できると言われています。
そのため、返済負担率が35%以内になるように借入額を希望すると、通る可能性が上がります。
また、他社からの借り入れが多い方は返済負担率が上がるだけでなく、住宅ローンが返済不能に陥るリスクが高いと判断されやすいです。
金融機関はこれらの項目を総合的に評価し、返済能力を判断しています。
個人信用情報に問題がないか
個人信用情報とは、信用情報機関に登録されている情報のことです。例えば、クレジットカードの支払い履歴や他のローンの利用状況などが登録されています。延滞の履歴が残っている場合は返済が滞るリスクが高いと判断できるため、金融機関は審査の際に個人信用情報を照会して融資の可否を判断します。
なおスマートフォンの本体代金を利用料金に上乗せして複数回に分けて支払う割賦契約の延滞、奨学金の延滞なども個人信用情報に登録されます。事故情報として信用情報に登録されると、完済後5年間は情報が残るので注意しましょう。
購入対象である住宅に担保価値があるか
購入対象である住宅の担保価値も非常に重要です。
金融機関は住宅ローンを契約する際、ローンの返済が滞った場合に備えて、購入対象の物件に抵当権を設定します。
住宅ローンを滞納すると、金融機関は抵当権が設定されている物件を売却して融資した資金を回収します。
そのため以下のような物件は、担保価値が低いとみなされ審査に通らない、または希望額を借り入れできない可能性が高いです。
- 築年数が古すぎる物件
- 再建築不可物件
- 借地権付きの物件
- 旧耐震基準の物件
- 最新の建築基準法に適合していない物件
これらに該当する物件は金融機関によって扱いが異なります。上記に該当する物件を購入予定の方は、住宅ローンを申し込む前に、これらの物件の扱いがどのようになっているか金融機関に確認しましょう。
住宅ローン審査が通らない理由
住宅ローンの審査は、事前審査と本審査の二段階で行われています。両方の審査に通過してようやく融資を受けることが可能です。
両方の審査で重視されるポイントは共通しています。審査に通るためには、どのような理由で審査に落ちるか事前に把握しておくことが大切です。
審査に落ちる主な理由は以下の5つです。
- 借り入れ希望額に対して収入が少ない
- 勤続年数が短い
- 健康上の問題で団体信用生命保険に加入できない
- 申告内容に虚偽がある
- 返済実績のないスーパーホワイト
1.借入希望額に対して収入が少ない
借入希望額に対して収入が少ないと、返済負担率が上昇するため、審査に落ちる可能性が高いです。先述したように返済負担率が高いと、金利上昇や景気の悪化などにより、返済が困難になる可能性が高いと判断されるため審査で不利になります。
また年収に対して適切な借入額なのかを調べる指標として「年収倍率」があります。計算式は「借入希望額÷年収」です。
一般的に7倍までであれば問題ないとされています。例えば、年収500万円の方は3,500万円までの借入であれば審査に通る可能性が高いです。
ただし年収倍率や借り入れ比率が低くても、自営業者や年俸制・歩合制などの勤務形態の方は収入の安定性がないとみなされ、審査で不利になる恐れがあります。
2.勤続年数が短い
勤続年数も住宅ローン審査の対象です。
住宅ローンは借入金額が数千万円と大きいため、返済期間を30年前後の長期に設定するのが一般的です。そのため、勤続年数が長い方は収入が安定しているとみなされ、審査を有利に進めやすいでしょう。
一方で勤続年数が短い方は、収入が不安定と判断されやすいため、審査では不利になる傾向があります。転職直後だと、勤務先が大手企業や公務員であっても、審査に通らない可能性があるので注意が必要です。
3.健康上の問題で団体信用生命保険に加入できない
基本的に金融機関は、住宅ローンの利用には団信への加入を必須にしています。そのため団信へ加入ができないと、住宅ローンの審査に通らない可能性が高いです。
特に持病を患っている方は、健康状態に問題があると判断されやすく、その結果として団信に加入できない恐れがあります。また団信には、以下の告知義務があります。
- 過去3ヵ月以内に医師の治療・投薬を受けたことがあるか
- 過去5年以内に、所定の病気により手術を受けたことがあるか
- 過去5年以内に病気やけがが原因で継続して7日以上の入院をしたことがあるか
- 過去5年以内に病気やけがによる手術を受けたことがあるか
- 過去2年以内に健康診断や人間ドックで、心臓や腎臓などの異常を指摘されたことがあるか
- 今までに身体障害者手帳の交付を受けたことがあるか、もしくは現在申請中か
- 手・足の欠損または機能に障害があるか
- 背骨(脊柱)・視力・聴力・言語・そしゃく機能に障害があるか
これらの告知内容をもとに保険会社は審査を行います。上記に該当する方でも、薬や治療の結果、症状が落ち着いていれば団信に加入できる可能性があります。
特に、健康状態に不安のある方は、病名だけでなく治療状況も告知するようにしましょう。具体的には、以下の内容を告知することで、現在病気を患っていても審査に通る可能性を高められます。
- 診断時期
- 現在の通院状況
- 投薬内容
- 検査の頻度
- 症状の経過
- 医師の指導内容
例えば、下記のように詳細な状況を伝えると、保険会社の理解を得やすくなります。
「2年前に高血圧と診断され、現在は月一回定期通院中です。薬を毎日服用しており、3ヵ月ごとに血液検査を受けています。直近半年は数値が安定しており、医師からは減塩と適度な運動を続けるよう指導されています」
このような情報を提供することで、保険会社は申し込み者の健康状態を正確に把握できるので、柔軟に審査してくれる可能性が高められるでしょう。
4.申告内容に虚偽がある
審査を有利に進めるために虚偽の申告を行っても、審査に通る可能性はほとんどありません。例えば、収入や預貯金は多めに、他社からの借入額は少な目に申告するなどです。
一ヵ所でも虚偽の申告があると、金融機関は申込者の申告内容を疑うようになります。一度でも虚偽申告によって審査に落ちると、信用情報に記録が残り、別の金融機関の審査でも、悪影響を及ぼすリスクがあります。
また健康状態や病歴について虚偽の申告を行うと、団信の加入を拒否されてしまい、住宅ローンの申し込み資格を失ってしまう可能性が高くなります。
悪質と判断された場合、書類に虚偽の内容を記載したことで、私文書偽造罪に問われる恐れもあります。また融資の実行後に虚偽記載が判明すると、一括返済を求められる可能性が高いです。
5.返済実績のないスーパーホワイト
過去にクレジットカードの利用歴や返済実績のない方を「スーパーホワイト」といいます。スーパーホワイトの場合、返済能力の有無を判断する材料が不足しているため、判断が難しく、住宅ローン審査で不利になる可能性が高いです。
特に30歳以上でスーパーホワイトだと、クレジットカードを使えない・作れない理由があるのでは、と疑われることもあり、厳しく審査される恐れがあります。
そのため、スーパーホワイトの方はまずクレジットカードを作成し、少額でも利用して返済実績を積むことをおすすめします。返済実績があると、金融機関は返済能力の有無を判断しやすくなり、審査に通過しやすくなります。
住宅ローン審査に通らないときにできること
「審査に一度落ちたので、住宅ローン契約を諦めた」という方もいるかもしれません。しかし、一度審査に落ちたからといって、今後住宅ローンを組めないと決まったわけではありません。
審査に通らない場合でも、以下8つの対処法により住宅ローンを組める可能性があります。
- 住宅ローンの相談サービスを利用する
- 頭金を増やして借入希望額を下げる
- 年収に見合った価格帯の物件にする
- フラット35を検討する
- ワイド団信に加入する
- ペアローンを組む
- 親子リレーローンを組む
- 別の金融機関に住宅ローンを申し込む
1.住宅ローンの相談サービスを利用する
住宅ローンの相談サービスとは、住宅ローンの専門家が相談者の経済状況や希望に応じて、適切なアドバイスをしてくれるサービスです。特にオススメの相談サービスはクレディセゾングループがiYell(いえーる)と提携している「住宅ローンの相談窓口」です。「住宅ローンの相談窓口」は、国内100社以上の金融機関と業務提携しています。そのため、相談者の状況に合わせて最適な金融機関を紹介してくれるのが魅力です。
住宅ローンの審査に通らないかもしれない、審査に落ちてしまったので対処法を知りたいと悩んでいる方は、一度相談してみてはいかがでしょうか。
2.頭金を増やして借入希望額を下げる
頭金とは、物件購入時に支払う自己資金のことです。先述したように、年収に対して借入額が多いと、返済負担率や年収倍率が高くなるため、審査に通る可能性が低くなります。
頭金を増やし、借入額を少なくすれば、返済負担率や年収倍率が低くなるので審査に通る可能性が高まります。
ただし、頭金を用意する際は、その後の生活に支障が生じない額に設定することが大切です。例えば貯蓄の全額を頭金に使ってしまった場合、、その後病気やけがなどで働けなくなったり、収入が減少したりすると、住宅ローンの返済が難しくなってしまいます。このような万一の事態に備えて、頭金として使うお金は余剰資金の中から準備しましょう。
3.年収に見合った価格帯の物件にする
年収に見合った価格帯の物件を購入することも、返済負担率を下げる方法です。
- 新築ではなく中古物件を購入する
- 都心ではなく郊外の物件を購入する
- 設備のグレードを落とす
どの条件を妥協するのかは、個々人によって異なります。妥協できるポイントを見つけて年収に見合った物件を狙うと、希望する借入金額を低くできるため、審査に通過できる可能性が高まります。
4.フラット35を検討する
フラット35とは、住宅金融支援機構が金融機関と提携して提供する住宅ローンのプランです。団信の加入が必須ではないので、加入できない方でも融資を受けられる可能性があります。
ただし、団信未加入の状態で審査に通ったとしても、万一の備えとして代わりの生命保険への加入は検討しましょう。
特にオススメする商品はセゾンのフラット35です。セゾンのフラット35は最長35年間の固定金利のため、返済計画を立てやすいのが魅力です。将来的に金利が上昇しても、返済額は変動しません。また各種手続きや融資もスピーディーに対応します。
5.ワイド団信に加入する
ワイド団信とは、一般的な団体信用生命保険と比べて、引受条件を緩和した団信です。持病や健康上の理由で団体信用生命保険に加入できない方でも加入できる可能性があります。
しかし、すべての方が利用できるわけではありません。また、ワイド団信は、金利が年0.3%前後上乗せになるケースが一般的です。
6.ペアローンを組む
ペアローンとは、夫婦のそれぞれが主たる債務者となり住宅ローンを組む方法です。例えば、夫婦、親子で住宅ローンを契約し、お互いが連帯保証人となります。夫婦ともにある程度の収入がある場合は、ペアローンの活用も検討しましょう。
ペアローンを活用すれば、通常の住宅ローンよりも大きな金額が借入可能になります。ただし、配偶者のローンの連帯責任も負うなどのデメリットもあるため、利用は慎重に検討しましょう。ペアローンのデメリットについて知りたい方は、下記の記事も併せてご確認ください。
7.親子リレーローンを組む
親子リレーローンとは、先に親が返済を行い、後に子どもが返済を引き継ぐ住宅ローンです。ご自身の収入が少なくて審査に通らないケースや、申し込み者が高齢で審査に通りにくいケースなどで使われています。
審査では、返済を引き継ぐ子どもの経済状況や返済能力などが重要視されます。そのため、子どもに滞納履歴や他のローンの借り入れがあった場合、審査に通らない可能性があるので注意が必要です。
8.別の金融機関に住宅ローンを申し込む
金融機関ごとに審査基準が異なるため、審査結果も変わってくるケースがあります。つまり、同じ条件でも審査に通らない金融機関もあれば審査に通る場合もあるので、審査に落ちたら別の金融機関に住宅ローンを申し込むのも選択肢のひとつです。
基本的に金利が低いネット銀行やメガバンクの方が、地方銀行や信用金庫よりも審査が厳しいです。そのためネット銀行やメガバンクの審査に通らなかった方は、地方銀行や信用金庫に審査を申し込んでみましょう。
おわりに
住宅ローンは金利が低く、返済期間も長く設定できるため、マイホーム購入の強い味方です。しかし住宅ローンを借りるためには、金融機関の審査に通る必要があります。
審査の通過率を高めるには、住宅ローンの申し込み要件や審査基準を把握したうえで準備を進める必要があります。
また審査に一度落ちても諦めてはいけません。落ちた理由が推測できれば、この記事で記載した対処法を実践することで審査に通る可能性が高まるので、再挑戦してみましょう。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。