認知症になる前に成年後見制度を押さえておこう!仕組みや対象者を分かりやすく解説

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認知症になる前に成年後見制度を押さえておこう!仕組みや対象者を分かりやすく解説

年齢を重ねるにつれ認知症になりやすくなり、ご自身の判断能力に不安を感じている方も多いでしょうか。このまま判断能力が低下していった場合、老後に蓄えたお金を詐欺などのリスクから守っていけるのか、不安になってしまいます。

  • 「認知症になったら財産はどうなるの?」
  • 「両親の判断力が鈍って詐欺に遭わないか心配だ」

このようなお悩みを抱えている方も多いのではないしょうか。令和3年度の警察庁の広報資料によると、高齢者を狙った特殊詐欺の被害総額は約278億円と、大きな被害が発生しています。判断能力が低下してご自身で適切な判断ができなくなる前に、対策を講じることが必要です。

参照元:令和3年における特殊詐欺の認知・検挙状況等について

日本には、判断能力が不十分な方に向けて、代理人が本人に代わり財産管理を行う「成年後見制度」という制度があります。判断能力が衰える前に、成年後見制度についてしっかり理解しておきましょう。このコラムでは、成年後見制度に関する疑問を解決するため、以下について解説します。

  • 成年後見制度の後見人は誰がなるの?
  • 成年後見制度の後見人ができること・できないこと
  • 成年後見制度の手続き方法と必要書類

あなたの財産を守る成年後見制度を徹底解説しています。ぜひ一読ください。

1.成年後見制度とは

成年後見制度とは「成人」で「判断能力が不十分な方」を守る制度です。認知症・知的障害・精神障害などにより判断能力が衰えてしまった方に、後見人が契約等の法律行為を代行します。

生活するうえで必要な契約を締結して、財産を維持・管理することで、本人を支援していきます。そうすることで、不利な契約や詐欺などから守ることができます。

2.成年後見制度には2種類ある

成年後見制度には「法定後見人制度」と「任意後見制度」の2種類があります。「法定後見制度」は、すでに判断能力が不十分と判断された場合に、家族などが申立を行い、後見人を決めてサポートしていく制度です。「任意後見制度」は将来、判断能力が不十分になった時のことを見据えて、ご自身で後見人を決めて備える制度です。

両者の違いを詳しくみていきましょう。

2-1.法定後見制度

「法定後見制度」は、被後見人の判断能力が低下していた場合に家族・四親等内の親族が家庭裁判所に対して申立を行い、後見人を立てる制度です。本人に代わり財産や権利を守り、法に則って支援を行います。

法定後見制度は、支援を受ける方の判断能力の程度により、後見・補佐・補助の3つに分けられます。

  • 後見:判断能力が全くない方
  • 保佐:判断能力が著しく不十分な方
  • 補助:判断能力が不十分な方

被後見人は医師や税理士、企業役員などの資格と地位を失います。また、後見・保佐・補助のレベルにより、後見人に与えられる権限も違ってきます。

2-2.任意後見制度

「任意後見制度」は、被後見人の判断能力が低下する前に、将来、サポート支援をしてくれる後見人をご自身で決めておく制度です。

本人の判断能力が低下したあと、事前に決めていた契約内容に従い家庭裁判所で任意後見監督人が選任され、初めて後見人としての効力が発揮されます。

3.成年後見制度の後見人になれる方

法律では「後見人になれない方」(民法847条:後見人の欠格事由)が定められています。後見人になれない方は以下のとおりです。

  • 未成年
  • 破産者
  • 過去に後見人を解任されたことがある方
  • 被後見人に控訴を起こした方、またその配偶者
  • 行方不明者
  • その他不正行為など後見人に適さない経歴の方

その欠格事由に該当しなければ、誰でも後見人になれますが、一般的に親族、専門家(弁護士・司法書士)、介護福祉士、地域の住民がなることが多いようです。

しかし、被後見人がある一定以上の財産を所有している場合は、専門家(弁護士・司法書士)が後見人を担当します。家庭裁判所が後見人を弁護士・司法書士を選任する理由は公開されていません。

4.成年後見制度の後見人ができる5つのこと

成年後見制度の後見人であれば、本人に代わり法的行為の手続きを行うことができます。家族が代理人となり交渉しても、契約者本人ではないと手続きができない事例が多々あります。そのような場合でも、成年後見制度で選任された後見人であれば、代わりに手続きできますので安心です。成年後見制度の後見人ができることは、以下のとおりです。

  • 預貯金の管理・契約
  • 介護保険契約
  • 不動産売却
  • 相続手続き
  • 身上監護

4-1.預貯金の管理・解約

後見人は、預貯金の管理や解約手続きを、被後見人の代理で行うことが許されています。預貯金の引き出しや解約は、原則として本人以外が手続きを行うことは認められていません。

しかし、介護や医療費で大きなお金が必要になった時、判断能力を失った本人しかお金を下ろせないとなると、それはそれで問題です。家族が代理人として手続きすることはできませんが、正式に選任を受けた後見人であれば、本人に代わり銀行などで手続きを行うことができます。

4-2.介護保険契約

介護施設への入所手続きや介護保険の契約についても、原則本人以外の手続きは認められていません。後見人を立てることで、本人に代わって介護施設への入所契約を締結することができます。介護施設への入所を検討中であれば、早めに後見人の選任手続きを行いましょう。

4-3.不動産売却

不動産の売却も、本人が手続きを行うのが基本です。家族でも代理人として手続きを行うことはできず、それらは全て後見人に一任されます。長期入院や施設への入所のため自宅が空き家になる場合、不動産の売却を考えているなら事前に後見人を選任しておくと安心です。

また、後見人といえど、自宅の売却を行うには家庭裁判所の許可が必要です。本人が望んでいない売却は認められないため、「介護資金に充てる」「固定資産税などの費用削減」などの正当な理由を準備しておきましょう。

4-4.相続手続き

認知症などで判断能力が不十分な場合、本人は遺産分割協議に参加できません。しかし、遺産分割協議は相続人全員が参加しなければ進められないため、唯一、後見人が本人の代理を担える人物となります。

4-5.身上監護

身上監護とは、本人が生活するうえで必要な法的手続きを行うことです。住居の確保・病院への手続きや、要介護認定の申請手続きがそれに該当します。このような法的手続きは、後見人しか代行できません。

5.成年後見制度の後見人ができないこと

成年後見制度の後見人といえど、被後見人に代わり全ての法的行為が許されているわけではありません。成年後見制度の後見人ができないことは以下のとおりです。

  • 遺言書の作成
  • 医療行為への同意
  • 戸籍に関する契約変更(婚姻・離婚・養子縁組など)
  • 不動産・株への投資行為
  • 相続対策
  • 介助行為

後見人は被後見人の財産管理や法的手続きを代行しますが、制限されている行為もあります。例えば、後見人は介助行為の契約は行えますが、被後見人の介護は行いません。また、後見人の責務は本人が亡くなるまでで、葬儀の手配は親族が対応します。

6.成年後見制度の手続きの流れ

成年後見制度の種類である「法定後見制度」と「任意後見制度」では、手続きの流れが違います。具体的にみていきましょう。

6-1.法定後見制度の手続き

成年後見制度の「法定後見制度」を利用する際の手続きの流れをみていきましょう。

・申立を行う

家族・四親等内の親族が「申立人」となり、家庭裁判所へ申立手続きを行います。申立には、申立書などの書類や申立手数料が必要になります。申立に必要な書類は以下のとおりです。

  • 戸籍謄本
  • 住民票
  • 診断書
  • 医学鑑定依頼文書
  • 登記されていないことの証明書(登記事項証明書)
  • 後見開始申立書・申立の趣旨
  • 親族関係図
  • 不動産登記簿謄本
  • 預貯金通帳・証明等
  • 生命保険証券
  • 株式・投資信託等報告書
  • 年金額通知書、その他の収入資料
  • 介護認定等通知書、生涯手帳
  • 固定資産税・所得税・住民税納付書
  • 施設入所費領収書、医療費領収書

また、後見人候補者も住民票と候補者移管する照会書(経歴、収入、財産状況など)を記入する必要があります。

・調査・面談が行われる

申立人と後見人候補者が家庭裁判所と面談を実施します。また家庭裁判所が、ご本人の家族に事実関係や家庭内の紛争などを、書面や電話で事実確認を行います。必要であれば専門医による医学鑑定が行われ、その後ご本人と面談を実施して判断能力の有無を確認していきます。

・審査・後見登記がされる

家庭裁判所にて後見人の審査が行われます。後見人決定後に、申立人と後見人に「審判書」が届き、審判書を受け取り2週間以内に、不服の申立てがなされなければ、後見開始の審判効力が生じます。

なお、審判確定から2週間程度で、後見登記がされます。通知された登記番号をもとに登記事項証明書を法務局で取得する必要があります。その登記事項証明書はさまざまな手続きのときに後見人権限を証する証となりますので大切です。

・後見人が仕事を開始する

確定・登記後に後見人の仕事が始まります。1ヵ月以内に財産目録を作成したり、定期的にサポート状況を報告したりすることが、後見人の仕事です。

6-2.任意後見制度の手続き

成年後見制度の「任意後見制度」を利用する際の手続きの流れをみていきましょう。

・支援者を決める

ご自身の判断能力が低下した時に、将来、サポートしてくれる方を決めておく必要があります。将来、任意後見人になってくれる人を「任意後見受任者」といいます。任意後見受任者は自由に決めることができ、家族や知人以外にも司法書士や弁護士に依頼することもできます。

・契約内容を決める

ご自身の判断能力が衰えてきた時に、何をどのように支援してもらいたいかライフプランに沿って決めましょう。これを任意後見契約といいます。例えば、任意後見契約の内容は以下のように具体的に決めることをおすすめします。

  • 自宅は処分して、介護施設に入りたい
  • 病気になった時は、〇〇病院にお世話になりたい
  • 株や不動産は売却して、家族に現金を残したい

・公正証書を作成する

任意後見契約は、法律により「公正証書」で作成することが決められています。契約内容をまとめた原案を「公証役場」に持ち込んで、公正証書を作成してもらいます。その後、本人と任意後見受任者が公証人の目の前で契約内容を交わして、署名押印をします。公正証書の作成に必要な資料は以下のとおりです。

  • 任意後見契約と代理権の範囲の草案
  • 本人の戸籍謄本、住民票、印鑑、印鑑証明書
  • 任意後見受任者の実印、印鑑証明書

各書類は発行から3ヵ月以内のものを用意してください。また、公正証書の作成に必要な費用は以下のとおりです。下記に加え、専門家への報酬等も必要になります。契約内容にもよりますが、費用は増減する可能性があります。

  • 基本手数料:   11,000円
  • 登記嘱託手数料:1,400円
  • 収入印紙代:  2,600円

・公証人が法務局へ登記依頼する

次に、公証人が法務局へ後見登記の依頼をかけます。約2~3週間後に登記が完了し、登記された内容を書面化した「登記事項証明書」が発行されます。

「登記事項証明書」は、任意後見人が役所や銀行で手続きを行う際に必要な書類です。すぐに必要となることはありませんが、内容を確認したい場合は、最寄りの法務局で取得しましょう。

・後見監督人申立・選任を行う

本人の判断能力が不十分になった際に、任意後見監督人を選任してもらうため、家庭裁判所に申立を行います。申立には、申立書などの書類や申立手数料が必要になります。申立に必要な書類は以下のとおりです。

  • 申立書
  • 本人の戸籍謄本
  • 任意後見契約公正証書の写し
  • 本人の成年後見等に関する登記事項証明書
  • 本人の診断書
  • 本人の財産に関する資料(不動産登記事項証明書、残高証明書など)
  • 任意後見監督人の候補者がいる場合、その方の住民票または戸籍附表
  • 任意後見監督人の候補者が法人の場合、商業登記簿謄本

・後見人の仕事を開始する

任意後見監督人の選任後、任意後見人の仕事が始まります。財産目録の作成や、定期的な報告業務、金融機関や役所への届出など、さまざまなことを行う必要があります。

7.成年後見制度は厳格な制度?4つの問題点

成年後見制度は、判断能力が低下・不十分になった時にあなたの財産を守ってくれる制度ですが、いくつか問題点も存在します。成年後見制度の問題点として指摘されている、以下4つの項目について解説します。

  • 申立費用が高額
  • 後見人・後見監督人の報酬が生涯必要になる
  • 途中で止めることができない
  • 財産を自由に使えなくなる

7-1.申立費用が高額

成年後見制度では、後見人を家庭裁判所へ申立をする際に高額な費用が発生します。申立費用は申立人が負担することになり、高額な費用は大きな負担といえるでしょう。申立時にかかる主な費用としては以下のとおりです。

  • 収入印紙:800円
  • 予納郵券:3,000〜5,000円
  • 登記費用:2,600円
  • 診断書 :10,000円
  • 鑑定費用:50,000〜100,000円

また、専門家(弁護士・司法書士など)へ依頼する場合、約10万〜20万円の依頼費用も上限に加え必要になります。後見人の申立時にはある程度の費用が必要となることを、しっかり認識しておきましょう。

7-2.後見人・後見監督人の報酬が生涯必要になる

第三者の後見人や後見監督人に対して、毎月報酬を支払う義務が発生します。それぞれの報酬相場は月2万~6万円が相場のようです。この支払いは被後見人が亡くなるまで生涯にわたって続きます。

7-3.途中で止めることができない

成年後見制度は、被後見人の保護を目的としているため、第三者の意思で途中止めることはできません。一度開始したら、被後見人が亡くなるまで後見人の責務が中断することはありません。例外は本人の判断能力が回復した時ですが、その可能性は低いでしょう。成年後見制度を利用する際は、途中で止められないことも踏まえて検討しましょう。

7-4.財産を自由に使えなくなる

成年後見制度で後見人を選任すると、被後見人の財産を自由に使うことができなくなります。成年後見制度の目的は、本人の財産を維持・管理することです。そのため、資産活用や相続対策は本来の目的と異なるため、財産を自由に使うことはできません。

おわりに

成年後見制度は、判断能力が不十分な方に代わり、後見人が契約などの法律行為を代理で行い本人を守っていく制度です。たとえ家族でも、本人以外が手続きを行うことは原則認められていません。一方、成年後見制度の後見人であれば、本人に代わって合法的にさまざまな法的行為の手続きを行うことができます。

しかし、成年後見制度は申立費用や家族以外が後見人の場合や、法定後見監督人への報酬が生涯、必要になるなど、多くのお金がかかります。また、財産を自由に使えなくなるなどの問題点もあります。

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