- 「退職後、健康保険に入らないとどうなるの?」
- 「退職後の健康保険の手続きを忘れてしまった!今から手続きできる?」
退職時の健康保険について、このような疑問やお悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。健康保険に入らなくてもいいや、と放置していたり、手続きを忘れて無保険のままになっていませんか。
健康保険の手続きは、国民年金と同様、退職後に必ず行わなければなりません。特に退職後再就職しない場合は、期限内にご自身で次の健康保険への加入手続きが必要です。
このコラムでは、以下について詳しく解説します。
このコラムを読んで分かること
- 退職後の健康保険の手続き方法
- 期限内に手続きできなかった場合の対処法
- 保険料の支払いが難しくなったときの手続き方法
退職後の健康保険に関する不安や疑問を解決できますので、ぜひ最後までお読みください。
退職後は健康保険の手続きが必ず必要
日本では、国民皆保険制度が採用されています。国民全員がなんらかの公的医療保険に加入すると定められているため、退職後は必ず何らかの健康保険に加入しなければなりません。
どんな理由があろうとも、健康保険に入らないという選択肢はないとされています。まずは、国民皆保険制度と3つの公的医療保険について、詳しく見ていきましょう。
国民皆保険制度とは
国民皆保険制度は、国民が必ずいずれかの公的医療保険に加入し、お互いの医療費を支え合いながら、誰もが平等に医療を受けられる仕組みのことです。日本では、国民健康保険法が1958年に制定され、国民皆保険制度が1961年に始まりました。国民皆保険制度のおかげで、国民のだれもが安心して必要な医療を受けられるようになっています。
公的医療保険(健康保険)とは
日本の公的医療保険は3つあります。
- 被用者保険(健康保険)
- 国民健康保険
- 後期高齢者医療制度
被用者保険とは、会社等に雇われている方が加入する健康保険のことで、後期高齢者医療制度に加入する75歳までの間に加入する健康保険です。労働者として雇われている場合は被用者保険に、自営業や無職などの場合は国民健康保険にそれぞれ加入します。
一方、後期高齢者医療制度は、75歳以降に加入する公的医療保険です。75歳になるとこれまで加入していた健康保険から脱退し、後期高齢者医療制度に移行します。
退職後に加入できる健康保険と手続き方法
退職後に加入できる健康保険は、3つあります。
- 任意継続健康保険
- 家族の健康保険
- 国民健康保険
どれに加入するかをご自身で選択し、必ず期限内に手続きしましょう。
任意継続健康保険
任意継続健康保険は、これまで加入していた職場の健康保険を任意で継続した場合の健康保険です。保険期間は最大2年間で、保険料は全額負担となります。
扶養家族がいる場合、これまでと同様に被扶養者としての資格を継続できるため、家族が多い場合は国民健康保険に加入するより保険料が安くなる場合があります。手続きは退職から20日以内です。期限内に手続きできなかった場合は、任意継続制度を利用することはできません。
家族の健康保険に加入する
家族に健康保険加入者がいる場合、被扶養者として家族の健康保険に加入できる場合があります。この場合は保険料が発生しないため、最もお得に健康保険に入れる方法です。被扶養者となるためには、それぞれの健康保険で収入要件などの細かな条件が定められています。
家族の健康保険に加入したい場合は、まず扶養の条件を家族に確認してもらいましょう。条件を満たしており加入できる場合は、健康保険に加入しているご家族の方が会社で手続きすることになります。
手続きは、退職後すみやかに行うようにしましょう。
国民健康保険
上記2つの健康保険にどちらにも入れない場合は、国民健康保険に加入します。国民健康保険には扶養制度がありません。あなたに妻や子どもがいる場合は、それぞれ加入手続きが必要になり、加入した人数分の保険料が発生します。
会社都合で退職した場合、保険料が一定期間軽減される「減免制度」が適用されます。国民健康保険の加入手続きは、退職後14日以内です。忘れずに手続きしましょう。
退職後、健康保険に入らないとどうなる?
退職後は、いずれかの保険に必ず加入しなければなりません。健康保険に加入しないいわゆる「未加入期間」を作ることはできないので注意しましょう。特に、退職後に再就職の予定がある方で、再就職までに期間が空いてしまう方は手続きを忘れがちです。再就職までの期間も健康保険の加入が必要ですので、忘れないようにしましょう。
もし手続きを忘れて健康保険に入らないとどうなるか、詳しく見ていきましょう。
未加入期間があっても遡って加入することになる
健康保険は強制保険のため、未加入期間を作ることはできません。そのため、手続きをしていない場合でも、遡って加入することになります。遅れて加入手続きをした場合、手続きした日ではなく被用者保険を脱退した翌日から加入となります。保険料もその日から発生するため、未加入期間を作らないように気をつけましょう。
未加入期間の保険料は最大2年間遡って納付しなければならない
国民健康保険料なら最大2年間、国民健康保険税なら最大3年間、遡って納付しなければなりません。未納分は一括払いを求められることが多くなっています。まとめて納付すると高額になるため、期限内に手続きするようにしましょう。
未加入期間ができてしまったらすぐに手続きを行おう
国民健康保険への加入手続きは14日以内です。手続きを忘れていた、期限内の手続きができなかったなどの理由で未加入期間ができてしまった場合は、気付いた時点で手続きを行いましょう。
任意継続健康保険の場合は、20日以内に手続きできなかった場合は加入資格を失い、国民健康保険に加入することになります。もし未加入期間ができてしまっても、未納になっている保険を納付することで、国民健康保険には加入できます。できるだけ早く手続きしましょう。
健康保険料が支払えないときはどうなる?
退職後の健康保険が支払えなくなった場合は、任意継続か国民健康保険かで対処が異なります。順に見ていきましょう。
任意継続した健康保険の保険料が支払えなかった場合
任意継続した健康保険の保険料が支払えなかった場合、資格を喪失します。喪失した資格を復活させることはできないため、国民健康保険へ加入するか、家族の健康保険に被扶養者として加入するかのどちらかの手続きが必要となります。
任意継続の場合は、保険料の支払い忘れに特に注意が必要です。前納制度や口座振替などを使って、保険料を確実に支払えるよう手続きしましょう。
国民健康保険料を支払えなかった場合
国民健康保険の保険料を支払えなかった場合は、滞納になります。長期滞納になった場合は、財産の差し押さえになる場合もあります。延滞金は納付期限の翌日から発生します。期限を過ぎてしまった場合は1日も早く支払うようにしましょう。
督促されても保険料の支払いがなかった場合は、有効期間の短い「短期保険証」が発行されます。それでも保険料の支払いがなかった場合は、保険証の返還を求められ、代わりに「資格証明書」が発行されます。国民健康保険の資格証明書は保険証の代わりにはなりません。医療費は全額負担になるため、気を付けましょう。
国民健康保険料が払えないときは軽減や減免の手続きをしよう
国民健康保険料の支払いが難しいときは、滞納する前にお住まいの市区町村の国民健康保険課などで相談しましょう。事情によっては保険料の軽減や、減免の手続きができる場合があります。
滞納してしまった保険料を軽減、減免することはできないため、相談は滞納前にすることが大切です。保険料の支払いに問題が起こりそうなときは、早めに相談して必要な手続きを行いましょう。主な軽減・減免制度は次のとおりです。
所得基準に基づく軽減
前年の総所得金額等の合計が基準以下の場合に、保険料の均等割額と平等割額の合計金額が7割、5割、2割と軽減される制度です。軽減割合と軽減の基準となる所得金額は次のとおりです。住民税の申告を済ませていれば、特段、手続きの必要はありません。
軽減の基準となる所得金額 | |
7割軽減 | 43万円+10万円×(給与所得者等の数-1) |
5割軽減 | 43万円+28.5万円×被保険者数等+10万円×(給与所得者等の数-1) |
2割軽減 | 43万円+52万円×被保険者数等+10万円×(給与所得者等の数-1) |
特例対象被保険者等(非自発的失業者)にかかる軽減
倒産や解雇など、非自発的な理由により離職した方に、一定期間国民健康保険料を軽減する制度です。雇用保険受給資格者証の離職理由欄に記載されたコード(番号)が以下の方が対象になり、給与所得を100分の30にして保険料が計算されます。
その他の保険料の減免制度
災害に遭われた方や、所得が激減したため生活が困難である場合など、特別な事情によって所得が大幅に減少するなどの場合に保険料が減免される制度です。
退職によって当年中の見込所得が一定金額以下になる場合も、申請すれば減免対象になる場合があります。また、新型コロナウイルス感染症の影響などにより収入が減少した場合も、減免対象です。該当する場合は、お住まいの市区町村などで早めに相談しましょう。
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おわりに
退職後、健康保険は必ず加入しなければならず、入らないという選択肢はありません。退職後に選択できるそれぞれの健康保険には、手続きできる期間が定められており、期間を過ぎると加入できない場合があります。所定の期限内に、必ず手続きを済ませるようにしましょう。
また、任意継続や被扶養者としての資格を喪失した場合は、国民健康保険への加入手続きが必要です。忘れずに行いましょう。
退職等により所得が激減する場合や、国民健康保険料が事情により支払えなくなった場合は、軽減や減免の手続きができる場合があります。対象になるかどうか、まずは相談してみましょう。