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えっ、私も必要?…会社員が陥る「確定申告」の落とし穴【税理士が解説】

宮路 幸人 多賀谷会計事務所・税理士/CFP

執筆者
宮路 幸人 多賀谷会計事務所・税理士/CFP

会計事務所における長い勤務経験・豊富な実務経験により、会計処理・税務処理及び経営や税務の相談など、さまざまな問題に対応。強みのある領域は不動産と相続関連。特に相続問題では、税金面だけでなく、家族が幸せになれるトータルな提案を重視している。宅地建物取引士、マンション管理士等の資格も保有。常にフットワークを軽く、お客様のニーズに応えるのがモットー。離島支援活動も積極的に行っている。

今年もやってきた「確定申告」の時期。「やるしかない」と重い腰を上げている方がいる一方で、「自分は会社員だから関係ないだろう」と思っている方も多いのではないでしょうか。

しかし、会社員であっても確定申告で還付金を受け取れる方がいると、多賀谷会計事務所の税理士・CFPの宮路幸人氏はいいます。

今回は、会社員でも確定申告が必要なケースや確定申告をしたほうが「お得」になるケースについて見ていきましょう。

そもそも「確定申告」とは

今年もまた確定申告の時期がやってきました。会社員は会社の年末調整で所得税計算が終了するため、通常は確定申告をする必要がありません。

そのため、確定申告といってもピンとこない会社員も多いものと思われます。では、そもそも確定申告とはなんでしょうか?

日本では、所得税法によって「申告納税制度」が採用されています。「申告納税制度」とは、自分の所得を自分で計算し、所得税を納めるということ。

例えば、個人で飲食店を経営している事業者などは、売上から仕入れや経費を差し引いた「所得」を自分で計算し、さらにそこから社会保険料控除や基礎控除などを差し引いた金額に税率を乗じて「所得税」を求めます。

所得税の税率は「累進課税方式」となっており、所得により税率は5%~45%と変動します。なお、住民税の場合は一律10%です。

このようにして求めた「所得税」を、確定申告によって申告し、自分で納めることになるわけです。個人による確定申告は毎年1月~12月までの暦年が対象で、翌年の2月16日~3月15日までの間に住所地の税務署長に申告・納税を行います。

「副業」をしている人は要注意…会社員でも確定申告が必要なケース

会社員でも、確定申告が必要となる場合があります。例えば、給与収入が2,000万円を超える方などは、高額所得者となり年末調整を行うことができないため、確定申告が必要です。

また、最近は副業を認める企業が増えていますが、その副業の所得が20万円を超える方(給与の場合は所得ではなく収入で20万円を超える方)は申告が必要です。副業が20万円以下であれば、少額のため所得税の申告は不要です。

その他、年の途中で退職し再就職していない方は年末調整が行われていないため、所得税の確定申告が必要となりますし、保険会社に積み立てていた満期保険の返戻金などが入ってきた方についても、「一時所得」に該当するため、金額によっては確定申告が必要です。

確定申告をしたほうが「お得」な会社員の条件3つ

上記では、確定申告が「必要」なケースを紹介してきましたが、確定申告をしたほうが「有利」な場合があります。以下で詳しくみていきましょう。

1年間にかかった医療費が「10万円」を超える(医療費控除など)

医療費の支払いが年間10万円以上ある方は、医療費控除を受けることができます。そのため、該当する方は「医療費控除」の申告をすれば、所得税の還付を受けることができます。

また、2017年より「セルフメディケ-ション税制」が始まりました。セルフメディケーション税制とは、医療費控除の特例とされ、きちんと健康診断などを受けている方が対象の市販薬を購入した際、所得控除を受けられる制度です。12,000円以上購入した場合に控除対象となります。

医療費控除よりもグッとハードルが下がり、適用対象者が増えたため、薬局で医薬品を購入する機会が多い方などは控除可能かどうか確認してみてはいかがでしょうか。

ふるさと納税をしている(寄付金控除)

近年は、「ふるさと納税」をしている方も多いのではないでしょうか。ふるさと納税を行った場合、確定申告をして寄付金控除を受けることにより所得税の還付を受けることができます。

なお、1年間で寄付した自治体が5ヵ所以内である場合は「ワンストップ特例」を選択することにより、確定申告を省略することもできます。ただし、医療費控除を受けるなど他の目的で確定申告をする場合は、ワンストップ特例は使えませんのでご注意ください。

その他、大災害が起こったときなどはその義援金が寄付の控除対象となる場合が多いです。また国や地方公共団体、財務大臣が指定した公益社団法人・公益財団法人、社会福祉法人や学校法人、認定NPO法人などの「特定の団体」への寄付で2,000円を超えた場合も寄付金控除の対象となりますので、寄付を行った際は寄付金控除の指定先となっているか確認すると良いでしょう。

ローンを使って住宅を購入(住所ローン控除)

住宅を購入する場合、ほとんどの方はローンを組んで購入します。住宅ロ-ンを組んで家を新築したり、購入したり、増改築などをした場合、一定の要件を満たすことにより「住宅ロ-ン控除」を受けることができます。

医療費控除や寄付金控除などは所得から差し引かれることになりますが、住宅ロ-ン控除は税額から直接差し引かれるため節税効果が大きくなるのです。

購入した住宅の種類により、借入金額の上限は3,000万円~5,000万円までと異なりますが、仮に2022年に購入した場合には、控除率は借入金額の0.7%、控除年数は13年となっています。

NISA、IDeCo…会社員でも知っているとおトクな制度

通常、資産運用に係る利益には20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%+住民税5%)の税金が課されます。しかし、下記の制度を活用することで、納税の減額または免除が可能です。 

NISA

「NISA」は、個人投資家のための税制優遇制度です。通常、株式や投資信託などは、利益に20%の税金がかかりますが、「NISA口座」内で購入した金融商品から得られる利益については非課税となります。

現時点では年間120万円、非課税期間は最長5年という条件がありますが、税制改正案で年間360万円、非課税期間は無制限に改正される法案が可決する可能性もあるため、今後はさらに税制面で優遇される見込みです。

iDeCo

「iDeCo」とは、証券会社が設定する限度額内で積み立て、運用を行うことで、60歳になってから利益分と元金を受け取ることができる投資方法です。「自らの年金を自分で準備する」とイメ-ジしていただくとわかりやすいかもしれません。

iDeCoの積立金は、企業年金に加入していない第2号被保険者の場合、年間276,000円までは所得控除の対象とすることができます。

株取引で損失が生じた場合

特定の口座を利用して株式投資で利益が出た場合、「分離課税」で申告は不要ですが、損失があった場合には、確定申告をすることによりその損失を3年間繰り越すことができます。株取引で損失が生じた年は確定申告を忘れずに行いましょう。

おわりに

いかがだったでしょうか? 会社員は確定申告に無関係と思っている方は多いでしょうが、医療費控除やふるさと納税、住宅を購入した場合などは、諸条件に該当すれば確定申告を行うことで税金が還付されます。

また、iDeCoをはじめ、会社員が知っておくと良い税金の知識などを紹介させていただきました。ぜひこれらの情報を参考に、本年度以降の確定申告や日々の節税に生かしていただければ幸いです。

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